日本の伝統「羽子板市」 東京・浅草寺
この時期、東京の六本木や表参道では、LEDのイルミネーションがクリスマスムードを盛り上げているが、台東区にある下町・浅草寺の仲見世通りでは、日本の伝統にのっとり、正月の縁起物で通りを飾って年の瀬を迎えている。 毎月18日は浅草寺の観音様の縁日。一年を締めくくる12月の縁日は特に「納めの観音」と呼ばれ、多くの参拝者で賑わう。江戸時代から毎年、縁起物を売る「歳の市」が開かれ、境内に店が軒を連ねてきた。そのなかでも羽子板市は、もっとも人気があり、江戸時代から続く市の形を現在に伝えているという。
17日から浅草寺境内で開かれている羽子板市では、約30軒の店が立ち並ぶ。参拝客が羽子板を買い求めるたび、「子ども健やかな成長を」と縁起のよい三本締めが響き渡る。 市に出店していた眼楽亭(東京都葛飾区金町)では、女物の歌舞伎の演目を描いた伝統的な「押絵羽子板」大小5000円から20万円を販売。「女の子が生まれた家庭の方やそうでなくても縁起物として夫婦二人で買い求める人も多い」と話していた。 羽子板は、いまはほとんど見かけなくなったが、正月の遊びの一つとして、羽根突きが親しまれてきた。羽子板の形は末広がりに通じ、災厄を「はねのける」に通じる。
羽子板の歴史は、室町時代より前にさかのぼる。羽子板の決まった形のなかに「躍動的な人物を無理なく収めること」が職人の腕の見せどころ。江戸時代後期には浮世絵師が描く歌舞伎役者の絵柄を羽子板に飾ったものが、羽子板市で売られている「押絵羽子板」の始まりで、評判の歌舞伎を描いた羽子板を競うように買い求めたという。 そういうことだから、半沢直樹で主演した堺雅人さんやプロ野球の田中将大投手らが「変わり羽子板」としてニュースで注目されることも、現在に通じる日本の伝統の一つの形なのかもしれない。 羽子板市は19日も開かれる。時間は午前9時から午後9時まで。