景気回復に「60歳以上にお金を使わせる」方策を 資産1400兆円をいかに消費に回すか
「景気は気から」の「気」が萎んでいる
猛暑続きだった今年もさすがに寒い時期を迎え、心温まる話が恋しくなってきたが、相変わらず景気に関しては明るい話がない。とくに物価高が続いている結果、消費者の節約志向が顕著で、小売業の来客数も如実に減少。各県ごとの景気ウォッチャー調査でも、物価高を背景に節約志向が強まって、買い控えの傾向が広がり、個人消費が停滞して景気は足踏み状態、という報告ばかりが目立つ。 【写真】「世界最高齢116歳」の日本人 好物は「カルピス」と…健康長寿にどう影響するのか
たとえば、パーソナルキャリア社が運営するJob総研が実施し、10月に発表した「2024年日本経済の意識調査~賃金・物価編~」を見ると、景気の悪さについて「とても実感」「実感」「どちらかといえば実感」の3つの回答の合計が74.2%におよんでいる。そう実感する理由としては、「娯楽などに気軽にお金が使えない」が66.0%、「自身の節約志向が強まっている」が46.9%という結果だった。 「景気は気から」といわれる。世の中が明るい空気につつまれて、はじめて人はお金を使う気になる、ということである。政府にはぜひ、経済を抜本的に立て直して、日本が持続的に成長できるように対策してほしいと願うが、同時に、世の中を明るくするためのムードづくりも欠かせないはずだ。「病は気から」と同じで、消費の主体である個人が明るい気持ちになれず、「娯楽などに気軽にお金が使えない」と感じているようでは、景気も「元気」になれない。 というのも、使われるべきお金は、あるところにはあるのである。日銀の資金循環統計(2024年4~6月期)によると、日本では個人が保有する金融資産残高の合計は2,212兆円にもなった。もちろん過去最高の数字である。しかも、そのうち60歳以上が保有する割合は、ここ20年ほどで1.5倍に膨らみ、かつては全体の4割少々だったのが、いまでは65%近く、すなわち1,400兆円程度になるという。 要するに、景気が浮揚するための一つの、しかし、とても大きなカギは、これらの金融資産がどれだけ消費に回るかにある。なかんずく、60歳以上の「気」にかかっているといえるだろう。