MONOEYESが語るバンドのあり方、非永続性を受け入れた先に描く希望
ミュージシャンとしては常に一等賞、最強を目指したい
一そういうヴィジョンありきで、この新曲4曲も作ってます? 細美:今回の俺の曲は、前にMONOEYES用に書いた曲のストックの中から、未完成だった曲を完成させたものだから、そういうビジョンありきで作ったっていうわけでもないけどね。ただ作詞は最後にやったから、多少その気分は入ってるかも。 一今回、レコーディングはL.A、プロデューサーはマイク・グリーンです。このチョイスはどんなところから? 細美:台湾のFire EX.がやってる〈Fire Ball〉ってフェスがあって。俺はゲストで出演したんだけど、出番までけっこう時間があって、楽屋でその間に喋ってた人がマイク・グリーンのお父さんだったの。 一え、そんな偶然あります? 細美:だよね(笑)。マイク・グリーンはFire EX.も録ってるから、その縁で来てたみたい。最初はお父さんと喋ってて、そこにマイクも参加して、お互い何をやってる人か知らないままずーっと何時間も喋ってた。で、打ち上げでトータルファットのShunから「細美さん、その人マイケル・グリーンです。ポップパンクの名プロデューサーですよ」「あっ、そうなんだ」って。話してて気も合ったので、連絡先だけ交換して「また会えたら」って。それで今年の2月かな? ロスに遊びに行ってた時に連絡したら「ご飯一緒に食べに行こうよ」って話になって、マイクのスタジオに迎えに行ってスタジオ見学してるうちに、「MONOEYESでこれからE.P.作るんだけど、一緒にやれるかな?」って聞いたら「やる」って言ってくれたから。メンバーのスケジュール確認したら2週間後しかなくて、速攻で話が決まりました(笑)。 一瀬:早かったねぇ(笑)。準備が大変だった。 一どんな方なんですか? 実際の作業の進め方。 細美:仕事がとにかく早い。ゴールが見えてるから迷わない。だからプロデューサーとして非常に頼もしい。 戸高:ポップパンク職人って感じの方でした。やりたいことがもう明確で。 スコット:うん、僕たちあんまり時間なかったしスケジュールはギュウギュウだったけど、そこもタッタッタッタッ!と進んでいって。 一曲は全部、すでにあったストックなんですか。 細美:俺はね。スコットは書き下ろしたのもあった? スコット:僕は全部今年書いた曲。けっこう急に決まったから、どういう感じになるのかわからなくて。いろんなテイストの曲書いて、そこからみんなにどれ使うか投票してもらった。 細美:俺がスコットのデモ聴いて感じたのは、今まで以上にモダンな曲書いてきたなってことでしたね。メロコアとかポップパンクじゃなくて、2020年代の音、普通にトップ40とかに入りそうな曲を最近は聴いてるのかなって思った。現代的なロックミュージックを作りたいんだなって。 スコット:うん。僕は今45歳で、あんまり日常でポップパンクは聴かなくなってるから。もちろんルーツにあるから出てくるのは当たり前でもあるけど、ずっと同じような感じで作っても面白くないし、もうちょっと新しいことにチャレンジしたいなと思って。 細美:ただ、それをマイクがどんどんオールドスクールなポップパンクに戻してったよね(笑)。 スコット:「Atmosphere」とか、最初もっとメロウな曲だった。ただ、メロコア・マスターのマイク・グリーンと一緒にやっていくと、どんどんそっち方向になっていったんだけど(笑)。 細美:あれはもうマイク・グリーン文法だから。逆に言えば、何を持っていってもこういう形にしてくれる安心感はあった。 一ただ、メロコア、ポップパンクって肩書きが今のMONOEYESに必要だとは、私は思わないんですね。この変化はサード以降ですけど、ライブハウス直送の曲じゃなくても、ツービートで走る曲じゃなくても、いい曲であればいいんだって、いい意味で肩の力が抜けているような印象もありますし。 細美:……質問が難しいなあ。下手にイエス、ノーで答えると間違えそう。 一瀬:うん、難しいね。 戸高:肩の力が抜けてって言われると、抜けきってるわけでもないし。 一言い方がややこしかったですね。「まず東北に行きたい、シンプルなパンクロックでみんなと歌いたい」という最初のテーマ。そこに縛られることがなくなったのかな、という意味です。肩の力が抜けたっていうのは。 一瀬:あぁ。俺たちが東北の小さなライブハウスに行って、パンクっぽいジャンル、みんなで騒げる音楽っていうものをまず最初に掲げて、「全国どこでもライブハウスのみんなに会いにいくぜ」って言ってたのは事実で。公言しちゃったぶん背負ってたものが、だいぶなくなってきたんじゃないか、っていうこと? 一そうです。そこが知りたかった。 細美:パンクロックで、なんて言ったことあったかなあ? 別にテーマは変わってないと思うよ。相変わらずMONOEYESは最もどこにでも行けるバンドだし、人との繋がりだけでお金の絡まないこともできる、すごくシンプルなバンドなんだよね。だけど、そのことと音楽的に成長することはまったく別で、「ブルレジ(石巻ブルー・レジスタンス)でやってるから、曲も演奏もこんなもんでいい」なんてことはないわけじゃん。そこはどんどん磨き上げていきたし、ミュージシャンとしては常に一等賞、最強を目指したい。 一はい。 細美:だから「東北にライブを持って行きたい」って言ってた当時と、感覚はなんも変わってないよ。たとえば「いいよ、ノーギャラでも行くよ」って言える感覚は今も同じなんだけど、そこでももっともっとすごいライブをしたい。だから肩の力が抜けたっていうのはよく分かんなくて、常に力は込めてる。今年もケセン・ロック・フェスティバルに呼んでもらえたんだけど、もちろん俺たちにはホームな場所だからすごく盛り上がったけど、でもそこに俺は満足してないの。ケセンでもどこでも、鳴ってる音楽はコーチェラにだって負けないものにしたい。グラストンベリーやフジロックで受け取る感動にだって引けを取りたくない。MONOEYESにしかできないライブがあるはずで、音楽的な感動をもっと共有したい。それは見てくれる人が100人であろうと数万人であろうと関係ないじゃん。