支持9割!「トランプ郡」はワシントンとNYが大嫌い 日本人と似ている?根底にある住民の思いとは…
牧場を営むブラッドリー・ヘールさん(43)は「ワシントンの政治が国を危機に陥れている」と嘆息する。物価高を日々体感しており、国民生活の改善に直結しない政府支出の抑制と減税を求める。トランプ氏の自己主張の強さは懸念材料だとしつつも「他の政治家よりも単刀直入で、保守派の政策を推進してくれる」と評価した。 ▽理想は日本? 住民が毛嫌いするのはワシントンだけではない。イシュマエルさんはニューヨーク市発行の私の記者証を目にすると「あら、ニューヨークから来たの。嫌だわ」と言って立ち去ってしまった。自分の電話番号を知らせようと、ヘールさんの携帯電話に連絡すると「ニューヨークの番号かよ…」と顔をしかめられた。 自分たちの目の届かないところで税金が浪費され、ワシントンやニューヨークの既得権益層が私腹を肥やしている―。ロバーツ郡の住民に共通するのは、日本人も共感できそうな強烈な政治不信や現状への不満だ。それが「異端者」を売り物にするトランプ氏への期待につながっている。
ヘールさんは共和党が比重を置く「小さな政府」を求める。トランプ氏を熱狂的に支持し、スローガン「米国を再び偉大に」の頭文字から取った「MAGA」と呼ばれる人々とは違って見えた。「合法的な移民は歓迎するが、膨大な数が不法に入ってくれば深刻な問題になる」とも話し、根っからの移民嫌いというわけではなさそうだった。 妙に心に残ったのは、ある女性住民の言葉だ。移民の流入や都市部での犯罪を懸念し「日本のように秩序があって安全な国にしてほしい」と訴えていた。日本人の価値観はリベラルな米国人よりも、保守的なトランプ氏支持者と共鳴するのかもしれないと戸惑った。 ▽刑事被告人なのに … ただ違和感は残る。トランプ氏がもともとニューヨークでの不動産業で成功を収めたことを考えれば既得権益層の一部であるはずだが、男性住民には「ビジネスで稼いでいるから他の政治家のように金で左右されない」と映る。 トランプ氏が四つの刑事事件で被告人となっている点も支持に影響はないようだ。うち一つは2021年の連邦議会襲撃に関わる事件だ。前年の大統領選で敗北した結果を覆そうと「死ぬ気で戦わなければ国を失う」と支持者らをあおり、議事堂に突入させたとして起訴された。
元小学校教諭ダイアナ・ロックさん(71)は、いずれの事件もバイデン民主党政権による政治的迫害だと受け止めている。トランプ氏の主張に沿った考え方だ。ロックさんは法律の専門家である郡判事の息子を持つが、司法制度よりもトランプ氏への信頼が上回っているようだった。 議会襲撃を巡っても「トランプ氏の支持者への演説を精査したけれど、扇動しているようには思えない」と断言する。既得権益層に立ち向かうトランプ氏への支持は揺るがないと語気を強めた。「彼は他の人と違い、私たちのために闘ってくれるの」