自民党総裁選、石破茂氏の勝利が「それほど意外な結果ではない」ワケ/倉山満の政局速報
27日、自民党総裁選が行われ、石破茂氏が決戦投票の末、新総裁に選出された。過去最多の立候補者にメディアではさまざまな予測が飛び交ったが、今回の結果に「それほど意外な結果ではない」と憲政史研究家の倉山満氏は分析する(以下、倉山満氏による寄稿)。
「国民人気と党内人気の合計」が総裁選の勝者を決める
自民党総裁選挙とは、内閣総理大臣を決める選挙である。総理大臣は衆議院の首班指名で決まるが、衆議院選挙をやれば常に自民党が勝つので、首班指名では自民党総裁が必ず勝つ。だから自民党総裁選挙は総理大臣を決める選挙だ。 今回、史上最多の9人が立候補。「先が読めない」と多くの人が困っていたが、『週刊SPA!』で私の連載「言論ストロングスタイル」をお読みいただいた方には、それほど意外な結果ではないのではないか。 私は二つの理論を解説し続けた。 一つめの理論は、「真・青木率」。一般に言われる「青木率」とは、参議院で実力者だった青木幹雄元官房長官が唱えたとされる。すなわち、「内閣支持率と与党支持率の合計が50を切ると内閣は危険水域」だそうだが、その二つ、比例する。それに、竹下登内閣や森喜朗内閣は、50どころか内閣支持率が消費税率を下回りそうだったが、誰も引きずりおろせなかった。本当に、青木幹雄ほどの人がこんな頓珍漢な説を唱えたのか、疑問に思っている。 そこで私は「真・青木率」を提唱した。すなわち、「国民人気と党内人気の合計」が総裁選の勝者を決める。国民人気とは、国政選挙に勝てる人気のこと。党内人気とは、仲間の国会議員の信頼のこと。この二つは矛盾する。
「選挙で戦えるか」が自民党のすべて
自民党は選挙に負けるとなると、党内でよってたかって、人気のない総理大臣を引きずりおろす。また、日頃はどんなに嫌いな奴でも総理に据える。そして従う。 たとえば、当時の菅義偉首相は総選挙直前、『菅おろし』の動きが一斉に広がり、抗しきれず退陣した。ところがその直後の総裁選では、「戦い相手の立憲民主党代表が枝野幸男ならば、わざわざ河野太郎にしなくても」と岸田文雄が当選した。 今回もそう。「岸田じゃ選挙を戦えない」との声に、岸田首相は電撃的に退陣表明。岸田首相の、ある種の奇襲効果で、政局は大混乱になった。 だから「真・青木率」の第一法則は国民人気、第二法則は党内人気。 これは自民党総裁選のルールとも対応する。国会議員の他に党員も投票権を持つ。100万人の党員票は、国会議員368人と同じ票数に割られる。この736人の奪い合いだ。自民党の党員は「少し政治に関心が高い普通の人」だ。国民世論を反映する。