日産狙っていた?「ホンハイ」EV事業に漂う暗雲。iPhone工場として有名、スマホ依存脱却を図るが
ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議入りを正式に発表した。台湾メディアは台湾EMS大手の鴻海精密工業(ホンハイ)が日産に出資を打診したと報道したが、同社の内田誠社長兼CEOは23日の記者会見で「(鴻海側から)アプローチを受けていない」と述べた。 【写真】中国のEV市場は競争激化。写真は世界的EVメーカーになったBYD。今では日本でも展開 とは言え、日産出身の関潤氏をEV部門に招いた鴻海が経営危機にある日本メーカーに興味を持たないはずはない。EV事業は創業者・郭台銘氏がトップを務めていた頃から、iPhone依存から抜け出すための「大願」だからだ。
プラスチック製品を生産する町工場として1974年に創業した鴻海は、高付加価値な電子部品を手掛けることで成長のステージに乗った。自動車部品も2000年代から生産し、2011年には中国の自動車メーカーとEVの共同開発を模索するなど、早くから関心を示していた。 ■テスラ「モデルS」の衝撃 創業者の郭台銘氏がEV製造への野心を語るようになったのは、10年前の2014年ごろ。テスラのモデルSが中国本土で発売され、中国のEV業界を語る上で外せない「節目の年」でもある。
スマートフォンメーカーのシャオミ(小米)を創業して数年の雷軍CEOはテスラのイーロン・マスクCEOを訪問し、モデルSを複数台購入してベンチャー仲間にプレゼントした。後にEVメーカー「理想汽車」を立ち上げる李想氏は、モデルSの中国の最初のユーザーとしてマスクCEOから鍵を手渡された。 ゼロからEVをつくりあげたテスラに大きな刺激を受けた中国人IT起業家は、競うようにEVメーカーを立ち上げ、中国のEVシフトの駆動力になった。
iPhoneの受託生産で押しも押されもせぬ世界的EMS企業に成長していた鴻海の郭台銘氏も同じころ、マスクCEOと接触している。アップル依存のリスクを認識していた鴻海は、EVならスマートフォンと同じように水平分業モデルが成り立つと想像したのだ。 当時の報道を見ると、郭台銘氏はEVの受託製造についてメディアの取材や公の場で語るようになり、「1万5000ドルでつくれる」という具体的価格を示してもいる。