日産狙っていた?「ホンハイ」EV事業に漂う暗雲。iPhone工場として有名、スマホ依存脱却を図るが
■幻の「鴻海・テンセント連合」 鴻海の「EV製造の夢」は徐々に加速していく。2015年6月、中国メガテックの一角であるテンセント(騰訊)、中国ディーラー大手の和諧汽車と組み、EV会社を設立する動きが表面化した。 IT技術に強みを持つテンセントと、製造技術に強いホンハイが手を組むことで従来にないEVを開発することを目指し、新会社のトップ選定には郭台銘氏、テンセントのCEOの馬化騰(ポニー・マー)氏も立ち会ったとされる
ただ、このプロジェクトは合弁会社設立前に鴻海、テンセントが撤退し、「BYTON(バイトン)」として再出発することになる。BYTONは2020年1月に総合商社の丸紅との資本業務提携を発表したので、聞いたことがある人もいるだろう。 鴻海は2018年、中国の新興EV企業「小鵬汽車」にも出資した。アリババ出身の起業家が立ち上げた小鵬汽車は技術力が評価され、多くの投資を集めており、郭台銘氏は自ら小鵬汽車を訪れ、激励した。
鴻海はその後もEV産業との距離を縮め、2020年以降は自らのポジショニングを「EV界のアンドロイド」と明確にした。 テスラの上海工場が2019年末に稼働し理想汽車、小鵬汽車、そして蔚来汽車(NIO)の新興EV3社の経営も軌道に乗った。EV市場が一気に活気づいたことで、中国では空前の参入ブームが起きていた。 鴻海はiPhoneの受託製造で成長した成功体験を、EVでも再現しようと考えた。iPhoneのときと違うのは工場ではなくハードウェアとソフトウェアのプラットフォーマーを志向した点だ。「下請け」から「頭脳」に飛躍するため、鴻海はテスラをiPhoneに例え、「EV界のアンドロイドになる」と公言するようになった。
2020年、2021年は大願実現に向け、怒涛の動きを見せる。欧米と中台に分けて簡単に紹介すると以下のようになる。 <欧米> 2020年1月 欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と中国でのEV製造に向けて合弁会社設立に向け交渉していると発表。 FCAが仏PSAと合併し新会社「ステランティス」を設立した影響で、交渉が長引いていたが、鴻海とステランティスは2021年5月にデジタル・コックピットなどの共同開発で合意した。両社は2023年6月、自動車用半導体の新会社をオランダに設立すると発表した。