日産狙っていた?「ホンハイ」EV事業に漂う暗雲。iPhone工場として有名、スマホ依存脱却を図るが
2021年2月 高級EVを手掛ける米新興メーカー「フィスカー」と提携に合意したと発表。フィスカーは共同開発したEVを2024年に発売すると表明した。 <中台> 2020年2月 日産自動車や三菱自動車の車両の受託製造を手掛ける台湾自動車大手・裕隆汽車製造(ユーロン)との合弁会社設立を発表。 2021年1月 2020年7月に資金ショートし経営が行き詰まっていた中国高級EVメーカー・バイトンとの提携を発表。鴻海が救済する形で、バイトンは頓挫したSUV車「M-Byte」の開発を再開し、2022年の量産化を目指すとした。
2021年1月 中国民営自動車最大手の浙江吉利控股集団(ジーリー)とEVの新会社を折半出資で設立すると発表。新会社はEVの完成車から部品、ITシステムまで担い、世界のEVメーカーに車両供給を狙うと青写真を描いた。 また、鴻海は2020年10月、EV向けのハードとソフトのオープンプラットフォーム「MIH」を公開した。劉揚偉董事長は記者会見で「2025~2027年にEV市場で世界シェア10%を獲得する」と述べた。
■夢から醒めたEV市場 振り返っても2020年からの2年間は、IT企業が次々にEVへの参入を発表し、トップがゲームチェンジをぶち上げ、夢があふれる時期だった。 ただ、中国では、「今から参入してもEVが量産できるのは2023~2024年になる。その頃には業界がレッドオーシャンになっている」と冷めた指摘もあった。その懸念は現実になり、日産、ホンダ、三菱自など日本メーカーの苦境にもつながっていく。 2023年に入るとEV市場は変調した。アメリカではEV需要が鈍り、テスラでさえ踊り場を迎えた。新興企業が苦しくなったのは言うまでもない。
自らは設計に専念するファブレスEVメーカーを目指していたフィスカーは2024年6月、チャプター11(日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第11条)の適用を申請し、経営破綻した。 アメリカの新興EVメーカーを顧客と見込んでいた鴻海にとって、アメリカ市場の変調は誤算だっただろう。 鴻海がiPhoneの生産拠点を置き、サプライチェーンを構築している中国市場もこの数年で競争構図が激変している。 中国市場はBYD(比亜迪)が急激に販売台数を伸ばし、今や一人勝ちの状況だ。BYDは2020年時点で吉利の後塵を拝しており、コロナ禍で医療マスクの生産に勤しんでいた。