16タイプ判定でZ世代に大人気。ネット性格診断「MBTI」ブームの暴走がシャレにならん!
■診断に説得力を感じるのはなぜ? しかし、それならばどうして16パーソナリティの診断に説得力を覚える人が多くいるのだろうか。診断を受けた中央大学の男子学生は、結果に強い信頼性を感じたという。 「実際にやってみると、僕は誰と相性がいいのかとか、彼女とうまくいくのかといった解説がすごく当てはまっているんです。周りを見ても結果の信憑性がはやりに拍車をかけている気がしますね」 コロナ禍でマッチングアプリを使っていた20代の女性は、相手男性のスクリーニングに診断結果を活用していたという。 「私は『INFJ』(提唱者)タイプなんですが、『ENFJ』(主人公)タイプと相性がいいとされているんですね。実際、会っていい印象を受けた男性はみなENFJでしたから、年収や学歴、身長よりもENFJであることのほうを重視していました。もうアプリはやめたけど、気になる人が現れたら、ENFJかどうかは知りたいかな」 だが小塩先生は、それは心理的なバイアスに過ぎないと言う。 「占いにせよ血液型診断にせよ、人は『診断』として出されたものを信じてしまう強いバイアスを持っています。例えば、『マジメすぎる面がありますね』などと多くの人に該当する曖昧な性質を診断結果として示されると、まさに自分のことだと納得してしま『バーナム効果』などがそうです。 まあ、16パーソナリティは気分で回答を変えれば診断結果も変わるので、変えようがない血液型診断よりはいいかもしれませんが」 とはいえ、自分の性格について振り返るために使うだけなら害もないのでは? 「そのとおりではあるのですが、こういったものは診断を提供する側がどれだけ気をつけてもひとり歩きしてしまうんです。 先ほど言ったように16パーソナリティはある個人の性格の中に複数の特性を仮定する『特性論』を前提にしていますが、特性論は複雑で理解しにくいですから、『Aさんは怠け者、Bさんはマジメ』と単純に切り分ける『類型論』に変化しがちなんです。 血液型診断も星座占いも、性格を特性の集合ではなくシンプルな類型としてとらえていますよね。類型論が効果的な場合もありますが、人間の性格はもっと複雑なものです」 それに加え、もっと大きな問題があると小塩先生は言う。 「それは、性格の違いが『良い性格・悪い性格』と価値づけされていくこと。16パーソナリティも決して個々人の性格を価値づけするものではありませんが、今でもネットで検索すると『嫌われるMBTIのタイプ』みたいな記事が出てきますよね。 ひとり歩きが始まっているということです。そして価値づけはマジョリティとマイノリティを区別させ、差別につながっていきます。 人の性格を知りたければ、診断に頼るのではなく会えばいいんですよ。複雑な人間同士の相性を性格診断で測ろうとすると、いい出会いの機会を失うことにもなりかねません」 性格診断で相性を測るのは効率的に思えるかもしれないが、人間の性格はとても複雑。コスパを追求するのはやめたほうがよさそうだ。 取材・文/佐藤 喬 イラスト/服部元信