16タイプ判定でZ世代に大人気。ネット性格診断「MBTI」ブームの暴走がシャレにならん!
■きっかけは韓国アイドル パーソナリティ心理学を研究している早稲田大学の小塩真司(おしお・あつし)先生はこう解説する。 「MBTIは精神科医のカール・ユングの理論を基に1960年代のアメリカで生まれた診断方法です。アメリカでは昔から企業などで使われていたのですが、日本ではやることはないだろうなと思っていたらこの大流行ですから、驚きですね。 はやった理由は、韓国のアイドルがよく"いわゆるMBTI"に言及するからでしょう」 しかし、本来は別物である16パーソナリティがMBTIとして広まってしまったのはどうして? 「16パーソナリティでもMBTIと同じように『ENFP』などアルファベット4文字を使ってタイプを表します。誰かが混同し、それが広まってしまったのでしょう」 16パーソナリティのHPによると、NERISタイプ診断はMBTIを参考にしているため、似た言葉が使われるそうだ。しかしMBTIが依拠するユング理論ではなく、心理学でよく使われる「ビッグファイブ」という分類を採用するなど大幅に変更を加えたという。 16パーソナリティがこれだけ流行していることを専門家はどう思っているのだろうか? 再び小塩先生に聞いてみた。 「少し前にはやった血液型診断を今風にしたようなものでしょう。16パーソナリティでは『内向型―外向型』『感情型―思考型』といった複数の特性に基づいて性格を診断し、そこから類型を導きますが、そのやり方自体は間違っているわけではありません。 性格の表現として多くの研究者が使うビッグファイブも、『外向性』『神経症傾向』『開放性』『協調性』『勤勉性』という5つの特性で性格を表します。 ただ、ちゃんと専門家が確認している保証はないですし、仮にそうであっても拡大解釈されているのは問題です。例えば、しばしば他人との相性を予測するために使われますが、そんな複雑な現象を検証できるわけがありません」 相性の予測って、そんなに難しいんですか? 「16パーソナリティでは人の性格を16のタイプに分けていますよね。ということは、相性の組み合わせは16×16=256通りもあることになります。そのひとつひとつを科学的に検証するなんて、気の遠くなる話ですよ。 それに、そもそも『相性』をどのように測定するか、研究者の合意はありません。例えば、夫婦関係を科学的に検証するなら離婚率など定量化できる目安がありますが、16パーソナリティについてそういう話を聞いたことがありません。仕事との相性についても同様です」 16パーソナリティの方法が間違っているとはいえないが、科学的な検証を経ているわけではない。少なくとも、相性をうのみにしてはいけないようだ。