「助っ人」のはずが現場の負担に…教育の質を揺るがす一部の臨時的任用教員に募る不安
「1年生は字が少なくて楽」指導書の意図をつかめない臨任
清水さんが具体例として挙げるのは、低学年の国語を教える臨任のAさんだ。1年生の国語の教科書冒頭は文字が少なく、ほとんどが絵で構成されている。その意図は、担任が読む指導書にしっかりと書かれている。しかし、Aさんは指導書を読んでいないのか、手抜きのような授業をしているのだという。 「本来は、絵を見て『この子は何をしているんだろう?』と投げかけて子どもたちの発想を引き出す時間で、1日1~2ページしか進まない内容です。しかしAさんは『文字がなくてすごく簡単でした』と目的とかけ離れた授業をして、どんどん進めてしまいます。Aさんは文章を読むことが嫌いらしく、指導書を読みたがらず、読んでも内容を理解できないようなんです」 Aさんのような臨任を他にも見てきたという清水さん。明らかに指導力が足りない臨任には、他の教員同士で時間の空いているときに授業を見に行き、手助けをしてきたという。 「放課後にベテランの教員が、『本当はこうするんだよ』とフォローに時間を費やすことが多々ありました。もちろんそうした教員ばかりではありませんが、人手不足を補うために登用された臨任が、かえって現場の負担を増やしている状況。これはどうしても無視できません」 民間企業であれば採用段階でふるいにかけたり、職務を遂行できないと判断されたりした場合、異動などの手段をとるもの。それがかなわないのは、臨任雇用の構造的な問題や教育現場の窮状が要因だと清水さんは語る。 「本当に厳しい人は噂が出回るため、校長の判断で受け入れを拒否することもできます。しかし、今は人手が足りません。臨任の数を確保することが優先され、問題がある人物でも受け入れざるをえない状況です。私の夫は民間企業で働いているので、『能力が足りない人は採用しなければいい』と気楽に言いますが、現在の教育現場ではそう簡単にはいきません。どういう人かわからないまま入ってこられるのは、正直怖いんです」 人の不幸を願うつもりはない。しかし、明らかに適性のない臨任に出会うたびに、「早く雇用期間を終えてほしい。そして万が一にも採用試験に合格することがありませんように……」と願わずにはいられないと清水さんは打ち明ける。