「バレないと思った」インサイダー事件で在宅起訴の元裁判官 元東証職員は父にTOB情報
公表前の株式公開買い付け(TOB)情報を基に株取引をしたとして、東京地検特捜部は25日、金融商品取引法違反の罪で、元裁判官の佐藤壮一郎被告(32)と東京証券取引所元職員、細道慶斗被告(26)、慶斗被告の父親で会社役員の正人被告(58)を同法違反罪で在宅起訴した。 【図でみる】元裁判官と東京証券取引所職員のインサイダー取引疑惑の構図 「バレないと思った」。佐藤被告は周囲に対し、こうインサイダー取引を認めていたという。知人らによると、学生時代はスポーツに打ち込むなど文武両道で知られていた。 「中学時代はバレー、高校時代はアメフトに打ち込んでおり、性格も体育会系気質だった」 学生時代の友人は、佐藤被告の印象をそう語る。 高校卒業後は法曹を目指して猛勉強をしていたといい、慶応大学法学部から同大法科大学院を経て、平成29年に24歳で司法試験に合格。31年から大阪地裁で、裁判官としてのキャリアをスタートさせた。 結婚も経て生活は順風満帆に見えたが、その後、出向先の金融庁でインサイダー取引に手を染めた。佐藤被告の知人は「金に困っていたことはないと思う。どうしてしまったのか」と話した。 一方、東証元職員の慶斗被告は新潟県出身で、東北大学を卒業後に東証に就職した。事件当時、株式公開買い付け(TOB)情報が集まる「適時開示」を担当。そこに目を付けたのが地元・新潟で自動車整備会社を営む父親の正人被告だった。 関係者によると、正人被告は、慶斗被告にTOB情報を伝えるよう要求。正人被告は3銘柄1700万円分を買い付けていたが、いずれも慶斗被告から情報を得てから数日以内に株を購入していた。 慶斗被告は直接的に利益を得ていたわけではないとみられるが、検察幹部は「父親の求めに応じる息子も息子だが、父親も悪質だ」と話した。