米中ロ「新大国時代」高まる摩擦 現代史の転換期【2016年国際展望】
●台頭が加速する中国
ロシアが主に軍事的な領域で米国に対する挑戦国としての立ち位置を明確にしてきた一方、中国は特に経済的な領域で台頭してきましたが、近年では軍事的な領域でも米国と対決姿勢を隠さなくなってきました。 このうち、まず経済面での対立をあげると、12月25日のAIIB(アジアインフラ投資銀行)の正式発足が挙げられます。これはアジア各国向けに融資を行う金融機関ですが、業務内容は米国が大きな影響力を持ってきたIMF(国際通貨基金)や世界銀行、そして日本が最大の出資国であるADB(アジア開発銀行)と競合するものです。つまり、AIIBの創設には、米国中心の国際金融秩序を突き崩す側面があるのです。 AIIBだけでなく、中国は2014年7月に、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカとともに、新開発銀行の設立に合意しています。新開発銀行は、いわばAIIBのグローバル版で、これもやはり米国の、融資を通じた各国(主に開発途上国だが、最近ではギリシャなどEU諸国を含む)への影響力に対抗するものです。 中国の主導による国際金融機関の創設は、西側内部のバランスにも影響を及ぼしています。AIIBのオリジナルメンバー57か国には、英仏独など15か国のEU加盟国 の他、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェー、スイスなどほとんどの西側先進国も含まれます。これははからずも、これら各国と日米の間に、中国に対する認識に差があることを浮き彫りにしたといえます。
その一方で、中国は特に海洋において、軍事的な進出も目立っています。例えば、中国はフィリピンやベトナムとの間で、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島の領有をめぐって対立していますが、2013年にはこれらのうち中国が実効支配する岩礁で埋め立て工事が行われていることが発覚。中国政府は、これらの人工島を自国の領土として、これらから12カイリの海域を「領海」と位置付けているため、これが国際海域の「航行の自由」を妨げると主張する米国との摩擦が大きくなりました。 2015年5月31日、中国の孫建国・副総参謀長は米国からの埋め立て工事中止要請を拒絶したうえで、これが「主権にのっとったもの」と強調し、さらに人工島の利用に「軍事防衛の目的」も含まれると明言。これに対して、10月27日に米海軍のイージス艦が問題の海域で哨戒活動を行い、そこが国際海域であることを改めて確認しました。 中国が海洋進出を加速させる背景には、経済発展によって高まるエネルギー需要を満たすために 海底資源を確保する目的とともに、中国船舶の警備もあります。中国政府は2014年11月、ユーラシア大陸を横断する経済圏「一路一帯」構想を発表。今後とも、経済活動と連動した軍事的な海上進出は加速するものとみられます。それにともない、ユーラシア大陸南岸は、米中の海洋覇権をめぐる対立の舞台として、ますますクローズアップされるものと見込まれるのです。