給料が足りず週2で献血…あのスターバックスが従業員にした冷酷すぎる「仕打ち」
「終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制はもう限界ではないか」 そんな思いを世界中の人々が抱えるなか、現実問題として地球温暖化が「資本主義など唯一永続可能な経済体制足りえない」ことを残酷なまでに示している。しかしその一方で、現状を追認するでも諦観を示すでもなく、夢物語でない現実に即したビジョンを示せる論者はいまだに現れない。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では「新自由主義の権化」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に資本主義の「教義」を問い直した『世界の賢人と語る「資本主義の先」』(井手壮平著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。 『世界の賢人と語る「資本主義の先」』連載第11回 『給料が125%UP!? アメリカの自動車労働組合がストライキで使った革新的な「手法」』より続く
アメリカの困窮
アメリカほど労働運動が衰退してきた国で、なぜ今になって労組の活動が再び盛んになってきているのか。当事者たちの話を聞くべく、各地のスターバックスで労働組合結成に踏み切った人たちに連絡を取ってみた。聞こえてきたのは、毎年のように日本円換算で5000億円前後の純利益をたたき出す企業の末端で、想像以上に悲惨な窮乏生活を強いられ、やむにやまれず立ち上がった若者たちの声だった。 「誰も労組とは縁がなかったが、自分たちの要求を実現するにはこれしかないと思った」。コロラド州デンバーのスターバックスで組合を結成したライアン・ディナロさん(22)はこう語る。
物価上昇に追いつかない昇給
ディナロさんによると、店でコーヒーをいれるバリスタたちの時給は15ドル(約2200円)から始まるが、歴史的な勢いで上がり続ける物価にはとても昇給が追いつかない。 ディナロさんは月1400ドルの家賃を年内に1700ドルに値上げされると大家から通告され、途方に暮れていた。店の同僚でも既に住居を失い、ホームレス向けのシェルターに入った人までいるという。 自身を含め、献血を収入の足しにしているバリスタたちも多いと話す。毎週2回、月に8回の成分献血をすることで700ドル受け取れるという。 ディナロさんは約2ヵ月間かけ、同僚たちの署名を集めて労組設立の投票を実施。2022年5月に組合が発足した。 カリフォルニア州レイクウッドのスターバックスで働くタイラー・キーリングさん(26)も自身の店で組合を結成した。スターバックスが米証券取引委員会(SEC)に提出した資料によると、同社社長の報酬は2020年の約1400万ドルから2021年には約2000万ドルに増えていた。 キーリングさんは「経営者は何百万ドルも報酬を増やしながら、現場には満足な賃上げがまったくなされていない」と批判する。