センバツ高校野球 東邦、振り切り白星 四回一挙3点、継投で窮地死守 /愛知
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は第2日の19日、4年ぶり31回目出場の東邦は1回戦で鳥取城北(鳥取)と対戦し、6―3で降した。12本の長短打に効果的なバントも絡めて得点を重ね、投げては宮国凌空、山北一颯、岡本昇磨の継投で切り抜けた。次戦は大会第7日の第2試合(24日午前11時半開始予定)で、高松商(香川)と対戦する。【森田采花、黒詰拓也】 快晴の甲子園。今大会から声出し応援が解禁となり、東邦が陣取る一塁側アルプススタンドがスクールカラーの鮮やかな緑色に染まった。マーチングバンド部のリズミカルな演奏や、控え選手たちの野太い声がスタンドに響き渡り、グラウンドで選手たちが活躍する度にアルプスが揺れた。 試合が動いたのは二回。2死二塁の場面で藤江壮太(2年)の二塁打で先制点を奪った。スタンドで見守っていた父、智也さん(50)は「チームを勢いづける一打になってうれしい」とメガホンをたたいて喜んだ。 四回には、4番石川瑛貴主将(3年)の中前打で無死一塁。父、尋貴さん(51)は「キャプテンですから。役割を果たしてくれました」と話す。続く5番、6番がバント。きっちりと転がし、二者連続でランナーとなり、無死満塁。7番南出玲丘人(3年)の右前適時打などで一挙3点を挙げた。南出の小学校時代の担任、上月慎さん(39)は「昔から勝負強い。期待通りだ」と声を張り上げた。 東邦ペースで進んだゲームは六回、先発の宮国凌空(3年)の制球が乱れ、2死満塁となり、2連続押し出し四球。父修さん(48)は「持ち味のストレートを軸に低めの変化球で打ち取ってほしい」と祈るように見守った。 1点差に迫られ不穏な空気が流れる七回、代打の伊藤秀樹(3年)が初球のフォークを捉え出塁。伊藤の代走で起用された三家拓翔(3年)が、犠打などで三塁まで進み、真辺麗生(3年)の左前安打で本塁を踏んだ。 七回には宮国の後を受けて、山北一颯(3年)が登板し、189センチの長身を生かした投球で2奪三振。母、麻美さん(45)は「普段はおっとりしている子なので自分のペースで投げてほしい」と話した。 八回からはライトで先発出場し、4打数2安打と活躍した岡本昇磨(3年)がマウンドに。2イニングを投げ、無安打で抑えた。母直子さん(48)は「昨日『調子が良い』と話していた。その通り調子が良いみたいでうれしい」と声を弾ませた。 いくつものピンチをしのぎながら、チーム一丸での勝利にアルプスからは、大きな拍手が湧き上がった。 ◇応援団長声の限り ○…東邦のアルプスでは応援団長を務める服部皇雅(3年)のひときわ遠くまで通る野太い声が響いた。アルプスにはベンチ入りできなかった選手たちが詰めかけ、団長は野球部員の推薦で決まる。「チームのためにいつも一生懸命」「誰よりも声を出して選手を支える」などと評価された服部が選ばれた。部員たちは緑色の鉢巻きを締めて応援するが、団長の服部は赤色の鉢巻きとたすきだ。服部は「自分たちも一緒に戦っている気持ちで応援する。絶対勝ってほしい」と声をからしていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇亡き祖父にささげた快打 東邦 藤江壮太外野手(2年) 耳をつんざくような打球音が響いた。二回2死二塁で迎えた最初の打席は「どんな球が来ても振っていこう」と決めていた。初球をはじき返すと、相手遊撃手を強襲する二塁打で、走者を還した。 昨秋の東海大会では2試合に出場し、5打数4安打と活躍。山田祐輔監督から「勝負強く、ここぞで打ってくれる」と全幅の信頼を得る背番号17は「積極的に振るのが強み」と胸を張る。 実は特別な思いを抱えて甲子園入りした。センバツ切符をつかんだ直後の2月、野球を始めるきっかけとなった祖父・光男さんが急死した。「甲子園に見に来てくれると約束していたけどかなわなかった」 野球好きだった光男さんのためにも「甲子園でおじいちゃんに届くようなヒットを必ず打つ」と誓い、バットを振る力を養うため、合宿では1日1000回以上バットを振り込み、自主練習も欠かさなかった。 甲子園で祖父にささげた一打はチームに勢いをもたらす先制の一打になった。「おじいちゃんが見守っていてくれると思うと自信が持てた。きっと喜んでくれていると思う」。次も快音を響かせる。【森田采花】