赤字覚悟のボディローションを17年間販売。LUSHが“寄付”商品を売り続ける理由
世界50の国・地域で850店舗を展開するイギリス発祥のコスメブランド・LUSH(ラッシュ)。 【全画像をみる】赤字覚悟のボディローションを17年間販売。LUSHが“寄付”商品を売り続ける理由 LUSHの2024年6月期のグローバルでの総売上は約1600億円(約8億ポンド、1ポンド=200円換算)。年間の売り上げが1兆円規模になる資生堂のようなグローバル展開する大規模コスメブランドと比較すると、その事業規模は大きいとは言えない。 ただ、売り上げに対するLUSHの「寄付額」は決して小さい額ではない。 LUSHでは2007年、消費税を除いた売り上げの全額を人権や動物の権利擁護、環境保護に取り組む団体に寄付する「チャリティポット」という“異例な”ハンド&ボディローションを発売した。 売り上げが寄付に回るため、売れれば売れるほど赤字になる商品だが、このキャンペーンは2024年11月まで17年間も継続。LUSHはこれまでに「チャリティポット」を含むチャリティプログラムでグローバル合計、約200億円もの寄付金を集め、世界の1万9000以上のプロジェクトに寄付してきた。日本法人のラッシュジャパンも2007年以降、8億8000万円以上の寄付実績がある。 なぜLUSHはそこまでして寄付にこだわるのか? LUSH…イギリスで1995年、6人の共創立者によって創業。世界で850店舗を展開し、従業員は1万2000人。日本では1999年に1号店・自由が丘店が開業し、2024年12月現在は国内では78店舗、1300人の従業員が働いている。世界に5つの製造拠点を持ち、神奈川県にも工場がありアジアエリアに輸出する製品などを製造している。
「もはや黙っているほうが難しい」
「LUSHはイギリスでもアメリカでも、普通じゃない会社という風に見られてきた。いつも孤高というか、1社で立ち上がってきた過去がある。 でも誰かが言い始めないと何も変わらない。LUSHとしてその役割を担うことに誇りを感じるし、もはや黙っていることの方が難しいんです」 LUSHの寄付キャンペーンなど倫理的な活動における責任者、エシカル・ディレクターのヒラリー・ジョーンズ氏は、LUSHの寄付活動の原動力についてそう説明する。 LUSHでは2024年11月、チャリティポットの発売を終了し、新しい2つのスキームを開始すると発表した。 1つが環境の変化によって危機に陥っている特定の動物を保護するための「キーストーン商品」、もう1つはLUSHが危惧すべきだと感じる世界の社会問題について知ってもらうための「ギビング商品」だ。売り上げ(税別)の75%程度が、問題の根本解決に取り組む規模の小さい団体に寄付されるという(商品によって寄付率が異なる)。 日本で2025年に発売予定のキーストーン商品の第1弾は、インドネシア・シムル島に生息するオナガザルの保護を目的とした入浴剤「Macaque Bubble Bar(マカク・バブルバー)」。現地のNGOへの寄付を通じて、オナガザルの保護はもちろん、小規模農家などを支援する。寄付額は3年で20万ポンド以上(約4000万円)を目指す。 ヒラリー氏は「オナガザルが置かれている問題を根本的に解決するには、現地で伝統的な生活をして暮らしている人々が、環境を壊すことなく生活できるサポートだ」と強調する。 「西洋の会社が他国の歴史や文化を無視してビジネス参入をしてきた歴史があったが、それではいけない。一番大事にしないといけないのは、土地の歴史や課題を一番知っている現地の人々の意思であり、彼らと共に進んでいくことです」
横山耕太郎