サツマイモ好きが高じて大学院で研究続けた女性が偶然口にした「さつま白波」…焼酎造り志し感じたやりがい
ずらりと並ぶタンクやかめの中に目盛り付きの棒を差し入れては、焼酎の量を確認していく。芋焼酎「さつま白波」で知られる「薩摩酒造」(鹿児島県枕崎市)の新入社員、長友萌恵さん(25)が任されている仕事の一つだ。漏れや蒸発で量が変化してないか、毎月1週間かけて約120基を調べる。 【写真】長友さんが製造に携わった焼酎
長友さんが勤務する「花渡川蒸溜所」(同)は、江戸時代や明治時代の文書から再現した伝統的な手法で焼酎造りに取り組んでいる。
主力工場の頴娃蒸溜所(南九州市)では、機械でサツマイモを粉砕したり、水とかき混ぜたりして、年間で1万キロ・リットルを生産するのに対し、全ての工程を人の手で行う花渡川蒸溜所の年間生産量は100キロ・リットルほど。ただ、手づくりの芋焼酎は独特のコクがあり人気を集める。
北九州市出身。蒸したサツマイモ好きが高じて、島根大生物資源科学部では、サツマイモの葉の茂り方から、収穫量を予想する研究に没頭。同大大学院でも研究を続け、植え付けてから1か月後の葉の茂り方から、大まかな収穫量を推定できるようになった。
芋焼酎をたしなむ機会はあまりなかったが、偶然「さつま白波」を口にして同社のことを知ると、「サツマイモに携わる仕事がしたい」と、昨年4月に入社した。同蒸溜所で働く社員5人で唯一の女性だ。昨年8月に始まった今季の焼酎造りに加わり、芋の選別のほか、容量や度数の確認などを担当した。
さらなる夢はイモ生産
作業は全て手作業で、男性蔵人と同じように力仕事もこなす。特に苦労したのが櫂入れと呼ばれる作業だ。1トン以上にもなる砕いたサツマイモと水、麹を木の棒でかき混ぜる。体力には自信があったものの、「手にマメができたり、腕が筋肉痛になったりして大変だった」と振り返る。
麹づくりでは、麹菌を米になじませるために、室温30度以上、湿度約90%の麹室に入って120キロの米を約10分間もむ。「サウナで作業しているみたい。温度によって酵素の生成が変わってしまうので、素早く正確に作業するのが難しかった」と語る。