技能実習制度について指宿弁護士が会見(全文1)政府・法務省は「カラスは白い」と言い続けてきた
技能実習生が声を上げられない理由
指宿:なぜ技能実習生は声を上げることができないのでしょうか。3つの原因があります。1つ目の原因は送り出し国において、送り出し機関から多額の渡航前費用を徴収されていること。そして権利侵害に対して声を上げないという約束をさせられた上、保証金を徴収され、違約金契約を締結させられ、違約金契約の、これは保証人ですね。保証人を付けさせられていることです。渡航前費用は技能実習生のその国における数年分の年収に当たる金額で、ベトナムの場合で、日本円で100万円程度の場合が多いと言われています。ほとんどの場合、この渡航前費用を借金で工面します。この借金を返す前に解雇されたり、帰国させられたりしたら大変なことになるので、技能実習生はどんな違法な労働条件でも我慢して働かざるを得なくなります。 2つ目の原因は日本で職場を移動する自由がないことです。技術、技能を習得して、国際貢献をするという建前のために、技能実習生は同じ職場で計画に従って実習をしていることになっています。問題があっても他の企業に転職することができません。よく、嫌ならやめてよそで働けばいいのにと日本では言われますが、技能実習生にはその自由がないのです。残業時給300円がおかしいと思ってもそれを労基署に申告したことで解雇されれば帰国せざるを得ません。こういう違法な事例の場合は例外的に実習先を移ることができるという制度にはなっているのですが、実際には別の実習先を見つけて移るということは極めて困難です。3年間働いて借金を返済した上で、家族のために稼ぎを持ち帰ろうと思って日本で出稼ぎにきているのに、途中で帰国することになれば借金だけが残るのです。 3つ目の原因は、技能実習生が権利を主張すると受け入れ企業や管理団体によって、本人の意思に反して強制的に帰国させられてしまうことです。これを私たちは強制帰国と呼んでいます。もちろん受け入れ企業や管理団体に技能実習生を強制的に帰国させる権限などありません。暴力や脅迫によって本人の意思に反して強制的に帰国させられるのですから、これは犯罪です。こういう信じられないことが実際に行われており、しかもこういう受け入れ企業の犯罪行為が取り締まられていないのです。実際に私の事務所に相談に来た技能実習生たちが、数週間後に強い圧力を受けて帰国させられてしまったことがありました。また民事裁判で強制帰国が不法行為と認定されて、損害賠償請求が認められたこともあります。 技能実習生は時給300円の労働者といわれていますが、その背景として技能実習生が物を言えない労働者であるということがあります。 通訳:ここでいいですか。