技能実習制度について指宿弁護士が会見(全文1)政府・法務省は「カラスは白い」と言い続けてきた
入管法等改正法案と技能実習制度の説明
指宿:今回の入管法等改正法案は外国人労働者の受け入れを目的とする制度です。しかし、実際にはずっと前から日本には非熟練分野を含めた外国人労働者の受け入れは行われてきました。2017年10月末の段階で128万人の外国人労働者が日本にいて、そのうち約26万人が技能実習生、そして留学生などの資格外活動の人が約30万人います。実際には多くの非熟練の外国人労働者の受け入れをしながら、そのことを認めてこなかったということは、とても異常なことです。 現在、非熟練労働者の受け入れは主に技能実習制度によって行われています。ここで原稿にはないんですが、技能実習制度について説明します。技能実習制度は技術、技能を発展途上国に移転するという目的の制度だと政府は説明しています。 通訳:ここまでいいですか。 はい、お願いします。 指宿:そして、原則として3年間日本で働く。そして3年間、3年が過ぎたら必ず帰らなければいけない。そして家族を連れてきてはいけないということになっています。昨年11月に改正法が施行されて、例外的にプラス2年間全部で5年間いれる場合が作られました。ただ、その5年が終わったら必ず帰らなければいけないという制度です。 技能実習制度の目的は、技術、技能の移転によって国際貢献をする制度だと説明されてきましたが、これは真っ赤なうそです。技能実習制度が労働力確保の手段として使われてきたことは誰の目にも明らかです。法務省もそのことは百も承知だと思います。カラスは黒い、ということは誰もが知っていることなのに、政府、法務省はカラスは白いと言い続けてきたのです。 今回の法案の目的が外国人労働者の受け入れであることを明示したことにより、パンドラの箱が開きました。外国人労働者の受け入れを巡る本格的な議論がやっと始まり、報道も行われ、市民の関心も高まっています。この機会に、国会でもしっかりした議論をすべきです。しかし昨日、衆議院で強行採決が行われました。審議時間はたったの15時間45分でした。これはとても残念なことです。参議院では十分な審議をしてほしいと思っています。 次に技能実習制度についてお話しします。現在、技能実習制度には構造的な問題があります。時給300円や400円で残業している技能実習生が数多くいます。11月9日私の担当している事件で水戸地裁が技能実習生の未払い残業代請求につき、約100万円の支払いを命じました。しかし、失礼。この裁判所の事実認定を前提にすると残業時給が400円ということになります。もちろんこれは最低賃金をはるかに下回る違法な賃金です。 通訳:すいません、先に言っちゃいました。 指宿:あ、言っちゃいました。はい。厚生労働省が外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導、送検等の状況という資料を出しています。URLをお手元の資料に付けておきました。これによると2017年には全国の労働基準監督機関が5966件の監督指導を行い、その70.8%に当たる4226件で労働基準関係法令の違反が認められたと記載されています。 悪質な労働基準関係法令違反が認められ、労働基準監督機関が送検、検事に送るってことですね。送検した件数は34件あります。賃金が月額6万円の事案、残業時給350円、400円の事例、時間外労働が月160時間の事例、労災隠しを行った事例、複数の技能実習生が課長がけがをした技能実習生の胸ぐらをつかんで殴ったと証言している事例などが報告されています。 では、技能実習生たちはこうした違法な行為に対して声を上げることができているのでしょうか。労基署などに対して是正を求めて申告することができているのでしょうか。この文書によると技能実習生から是正を求めてなされた申告は89件であったと記載されています。1年間で89件です。4226件の違反があるのに、それに対して89件なのです。たったの2%です。98%の違反については、技能実習生は申告をしていません。