野球指導者が悩む“保護者の苦情”は「ほぼゼロ」 絶大効果もたらす“定期配布物”の中身
少年野球界の課題解決の糸口に? 栃木・横川中央学童野球部が実践する“選手主導”
野球人口減少が続く中、少年野球の指導者には技術を教えるだけでなく、保護者との適切な対話や選手への配慮も求められている。ある意味、労力の大きい“指導者受難の時代”ともいえるが、その中でどう適切に対処し、未来ある子どもたちを育てていくか。栃木県宇都宮市で活動する小学生学童野球チーム「横川中央学童野球部」の取り組みから、現代の少年野球指導の可能性を探っていく。 【動画】“押し付け指導”を変えたい令和の大人必見 小学生が生き生き発言する全軟連啓発動画 ◇◇◇◇◇◇◇ 縮小傾向が続く少年野球界。指導者は人間性やモラルが問われ、コミュニケーション力や学ぶ姿勢が強く求められてきている。また一方で、保護者からの理不尽な要求やクレームに、悩まされる指導者が増えているのも実情のようだ。 「ウチの子はなぜ、試合で使ってもらえないのですか? 出られないなら、やめさせます」 わが子を想うがゆえか、保護者からの一方的な通告。かつて、余るほど選手がいた時代なら、そのまま放置もできただろう。 しかし、近年の学童野球界において1学年で9人そろうチームは少数派で、大半は選手を増やすのに躍起。学区制など、旧来からの“シバリ”が残る地方部になるほど、その傾向は強まる。現場へ取材に出てみると、少子化と保護者の問題行動との狭間で、苦慮する指導者に出会うことが珍しくない。 「ウチも保護者からのクレームがゼロではありません。でも、試合のメンバーのことで何か言われることはほぼありません」 こう語るのは、栃木県の宇都宮市で活動する横川中央学童野球部の堀野誠監督だ。大きな効力を発揮しているのは、10試合から3か月単位で各家庭に配布している個人成績一覧表だという。
全員が年間で最低50打席…個人成績共有で“一枚岩のベストメンバー”が組める
その中身は打撃部門で23項目。チームとして積極的な打撃をテーマにしており、三振は「見逃し」と「空振り」に振り分けている。投手部門はそれ以上の項目があり、NPB公式サイトの年度別個人成績より多い。また、体力を測定できる公共施設も定期利用しており、スプリント力や跳躍力など11項目のランキング表もチームで共有しているという。 「表の入力も集計もすべて私がやっています。手間暇はかかりますが、メリットは計り知れません。私自身も主観(選手評価)とのギャップに気付いたり、意外な長所を見出せたり。データという裏付けもあるので、勝ちにいく大会では自信を持ってオーダーを組めるし、異論も出ませんね」 こう語る堀野監督の情熱とは、グラウンドで発揮するだけのものではないようだ。さらに感心するのは、全選手が年間で少なくとも50打席は立てるように、配慮をしていること。 「5・6年生のチームと、4年生以下のチームとで、合わせて年間120試合くらいは消化します。そのうち、夏の全国大会につながる予選など重要な大会とその前の10試合はベスト布陣を探っていきますが、あとは土日の練習試合2試合の中で、個々にどんどんチャンスを与えていきます」