井上尚弥いとこの浩樹が“最強DNA”で日本Sライト級王座を豪快TKO防衛!
プロボクシングの日本スーパーライト級タイトルマッチが1日、後楽園ホールで行われ王者の井上浩樹(27、大橋)が同級8位の池田竜司(24、竹原&畑山)を5回34秒TKOで下して初防衛に成功した。王者になった試合は慎重に運びすぎて”いとこ”のWBA、IBF世界バンタム級王者の井上尚弥から”辛口評”が飛んだが、この日は、計3度のダウンを奪う圧勝で成長面をアピール。「ゆくゆくは世界へ」と夢を大きく持つ井上に大橋秀行会長も、「ある時大きな話がバンと来るかも。楽しみに」と、将来構想を温めていることをほのめかした。”最強井上DNA”を持つ第3の男がいよいよ覚醒し始めてきた。
目線をずらすフェイントで左が炸裂
プレッシャーと右のリードジャブ。井上は、ボクサーにとって生命線とも言える2つの武器でスタートから主導権を握った。 「序盤に足が動いてジャブも当たった。練習通りの動きができた」 2ラウンドの終了間際にはノーモーションの左ストレートが池田の顔面をまともにとらえた。挑戦者は、立ったままだったが、レフェリーは、戦意を少し失いかけた姿をダウンと認定した。 3ラウンドには、誘い込んでおいてのカウンターの強烈な右フックを一閃。尻もちをつかせての2度目のダウン。大橋会長が絶賛するタイミングと威力である。 だが、2度のダウンを奪い、バッティングで流血させながらも、フィニッシュには持っていけなかった。3ラウンドにまともに鼻に受けた”頭突き”のダメージがあって、頭が気になり、しかも、右フックのカウンターを狙いすぎて、続く4ラウンドを膠着の3分間にしてしまったのである。 「狙いすぎました。バッティングも気になったし、綺麗にいこうとしすぎたんです。それでちょっと止まったって感じですね。あそこでうまくできないのが悪い所。しっかりと打ち分けができれば、もっと上を狙えるんですが」 試合後に井上が冷静に自己分析した通りである。 もしこれが世界戦で、相手のレベルがもっと高ければ、こういう膠着を作ってしまうと一気に流れを失う。 しかし、井上は自ら悪い流れを断ち切った。 5ラウンドの開始早々だった。 「温存していた」という左ストレートが炸裂した。 目線をボディ付近にずらす目のフェイントを仕掛けた。池田の意識が下に向いた瞬間を見逃さない。 左ストレートを1発、2発……コーナーにドタドタと下がりながらよろけたのを確認したレフェリーは間に入ってTKOを宣告した。 「一発を狙いました。手ごたえがありました」 今回の防衛戦に向けて練習では「力まないこと」をテーマにしてきた。その効果からか、ハードパンチャーの宿命と言える左の拳を練習で痛めることがなくなって、中断期間がなくなり、「これまでの倍は練習ができた」という。それでも試合になると力むものだが、その感覚をそのままリングに持ち込めたところが、“最強井上DNA”の非凡さなのだろう。