韓国社会を切り裂く「5・18」 戒厳令騒動で「深すぎる分断」浮き彫りに
「再生産」される保守派と進歩派の対立
尹が宣布した戒厳令はほぼ全国民にとって寝耳に水であったのに、多数のソウル市民がいち早く国会に参集し、戒厳軍と対峙した。 それを可能にしたのは、前回紹介したように、全斗煥が権力を奪取した1979年の「粛軍クーデター」を題材にした大ヒット映画『ソウルの春』と現実を即座に重ねた人が大勢いたためだ。粛軍クーデターの翌年、全斗煥のもとで光州事件が起きた。 そういったことを踏まえれば、2024年12月3日から4日にかけての韓国は過去に助けられたといえよう。 だが、タイムスパンを広げて考えてみると、どうか。 近年、韓国では毎年5月になると「5・18」をめぐる議論が先鋭化する。進歩派政権は何度も事件の真相を究明する調査を通じて保守派を圧迫してきた。一方の保守派政権は自分たちにとって分が悪いという意識から、事件の遺族に寄り添う姿勢が希薄である。そうした消極さをまた進歩派が攻撃し、それに保守派がまた苛立つというサイクルが繰り返されてきた。
Shuhei Ikehata