名前が「片岡明日香」、『めちゃイケ』にハマって…日テレ若手プロデューサーが語る数奇な運命「テレビしか眼中になかった」
カルチャーショックだった、テレビ局での「通過儀礼」
――夢を叶えて入ったテレビの世界で、驚きや違和感はありましたか? 実際入ってみると、楽しいものを作るための努力と熱量がえげつないなと思いました。あとは正直意外と地味な仕事も多いな、と(笑)。キラキラテレビ! というわけではなく、ほとんどが地道な積み重ねの作業です。 ただ、今でも『THE MUSIC DAY』や『THE DANCE DAY』『ベストアーティスト』『24時間テレビ』などの大型生放送番組の現場で、制作・技術・美術全てのジャンルのプロのスタッフが大集結して、一緒に番組を作って生の歓声を浴びると、「テレビってやっぱり楽しい!」と思います。そこは小学校のときの感覚のままですね。 ――「面白いものを作る努力がえげつない」というのは、具体的にはどんなところですか。 日本テレビに制作で入社すると1年目は必ず『24時間テレビ』を担当するのが伝統なんです。通過儀礼みたいなものですね。全員で、めっちゃデカいカンペを作るんですよ。高さ4~5メートルくらいの。ドラマ『ブラッシュアップライフ』でもオマージュされてましたね。 大きすぎて句読点や濁点はうまく印刷されないから自分たちで手書きで書いたり、本番はそのカンペをタレントさんの前で脚立に登って掲げて、指し棒で『負けないで』の歌詞を一文字ずつさらったり。 それだけの仕事で1カ月が終わるんです。鬼のカルチャーショックでしたね。テレビで面白いことをやるために、その裏ではこれだけ多くの人が大変な仕事をしているんだと入社してわかりました。 ――その通過儀礼を経て、何が身につくんでしょう? そのときは思考停止でとにかくやるしかなくて、とにかく目の前のことにがむしゃらで。でも、のちにディレクターになったときに、「演者さんのカンペを見やすくする」という作業ひとつがどれだけ重要だったかに気づくんですよね。気づかないうちに叩き込まれている。 ――「思考停止でやるしかなかった」と言いながらも、その状況を客観的に観ていた印象を受けました。やはり「もうちょっとどうにかならないのか?」という思いはあるのでは? あります。1年目でその経験があったので、完全に振り切れてしまい(笑)、「こうしたい」「ああしたい」を言えるようになったんです。テレビ業界での女性の生き抜き方を知ったというか。 理不尽だなということに心を埋め尽くされるよりも、精神に高嶋ちさ子さん、心にギャルと粗品(霜降り明星)を飼って手を動かすしかない。それが前篇で話した、『THE W』の認知度を高めるために意見を出し続けていたことにつながるんですけどね。