EUがグリーンウォッシング禁止指令案を採択、日本のファッション業界への影響は?
2024年2月、EU理事会が「グリーンウォッシング」を禁止する指令案を採択した。「根拠のない環境配慮表示などによって消費者に誤解を与えること」を指すこの言葉は、日本ではまだ比較的馴染みが薄いものの、ファッション業界にも少なくない影響がありそうだと専門家は注目する。そこで本稿では、「グリーンウォッシング」にまつわる基礎知識から、今回EUで採択された禁止指令案の要点、日本のアパレル業界が押さえておくべきポイントまで、ファッションローに詳しい平川裕氏が解説する。 【写真】B Corp認証を取得した日本のブランド「CFCL」の服
欧米を中心に規制が強まる“グリーンウォッシング”とは?
「グリーンウォッシング」とは、実体を伴わないにもかかわらず、あたかも「環境へ配慮している」という誤った印象を消費者に与えたり、実際の商品よりも環境に配慮した商品であるかのように製品パッケージや広告などに表示して消費者の誤解を招く行動を指す。近年、社会全体でサステナビリティに対する関心が高まったことに伴い、サステナビリティをブランディングや宣伝に活用する動きが増えている。明確な根拠や裏付けデータがない状態で「サステナブル」と謳い、商品を宣伝・販売する事例が世界的に増えてきたことで、欧米を中心にグリーンウォッシングを法で規制しようとする動きが活発化している。
ファッション業界にも広がる動き、過去にはH&Mも訴訟に発展
欧米では、ファッション関連企業が「グリーンウォッシング」を巡って訴訟になった事例が複数存在する。例えば、「H&M」が長年にわたって展開してきた、地球環境への負荷が少ないサステナブルな素材を使用した「コンシャス・チョイス(Conscious Choice)」 コレクションは、製品タグに記載の環境配慮に関する評価基準や文言に、虚偽や消費者の誤解を招く恐れがある内容があったとして、2019年にノルウェー消費者庁が違法と判断。それを皮切りに、2022年7月にはアメリカ・ニューヨーク州でクラスアクション(集団訴訟)が提起されたほか、同年8月にはオランダ消費者庁・市場庁が同社に対して是正勧告を行い、同年11月にはアメリカ・ミズーリ州でもクラスアクションが起きるなど、複数の国や州で訴訟などが発生している。