EUがグリーンウォッシング禁止指令案を採択、日本のファッション業界への影響は?
ファッション業界が押さえるべき「グリーンウォッシング禁止指令」のポイント
同指令案は、「循環型経済行動計画」に盛り込まれたイニシアチブの一つであり、2022年3月に欧州委員会のディディエ・レンデルス(Didier Reynders)委員が提案した。今後、欧州議会議長および理事会議長の署名を経た後、欧州連合官報に掲載。掲載20日目に発効となり、EU加盟国は2年以内にこの規則を国内法に統合する必要がある。 指令案の冒頭では、消費者は十分な情報を得た上で購買決定を行うことが必要不可欠であり、そのために事業者は明確で適切、かつ信頼できる情報を提供する責任があると述べている。その責任を果たすため、事業者は広告や製品パッケージといった製品の発表を通じて、耐久性や修理可能性、リサイクル可能性など、製品の環境的・社会的特性と循環性について消費者に誤解を与えてはならないと規定した。 その上で、同指令案には一例として、以下のような具体的な規制や禁止事項などが盛り込まれた。 1. 将来的な環境目標を掲げる場合は、検証可能で現実的な実施計画とすること 将来的な目標を掲げることで消費者に環境面の訴求を行う場合、「消費者が該当製品を購入することで低炭素経済に貢献している」という印象を与えると指摘。このような主張の公平性と信頼性を確保するために、検証可能な目標を掲げ、それを踏まえた現実的な実施計画を定められない場合は、こうした主張を行うことを禁止するとしている。 2. 製品比較時には、消費者に対して比較方法などの情報を提供することを義務付ける 耐久性や修理可能性、リサイクル可能性など、環境的・社会的側面に基づいて製品比較を行う際には、比較方法や比較対象製品、製品の供給者などの情報を消費者に提供することを義務付け、その情報は常に最新であるべきとしている。 3. 認証されていないサステナブル表示の禁止 サステナブル表示は、透明性と信頼性の確保が必要不可欠であるため、認証スキームに基づかない、あるいは公的機関によって確立されていないサステナブル表示は禁止すべきとしている。 4. 一般的な環境訴求の禁止 広義の意味で環境に配慮していると主張し、環境性能が実証できない場合には、消費者が誤解するような表現の使用を禁止する。具体例として、「環境にやさしい」「エコフレンドリー」「グリーン」「自然の友」「エコロジカル」「環境的に正しい」「カーボンフレンドリー」「エネルギー効率が高い」「生分解性」「バイオベース」などを挙げている。 5. 製品や企業活動の限定的な側面を、製品や企業活動全体の表示に使用することの禁止 例えば、ある製品に対して「リサイクル材を使用」と表示した場合、製品全体がリサイクル材で作られているかのように見せかけながら、実際には梱包材だけがリサイクル材で作られている場合は、消費者の誤解を招くとして禁止すべきとしている。 6. カーボンオフセット*を根拠に、該当製品が温室効果ガス排出の点で環境に中立的、削減的、またはプラスの影響を与えるという主張の禁止 このような主張は、消費者に製品そのものや製品の供給・生産に関するものであると誤解させたり、該当製品の消費は環境に影響を与えないという誤った印象を与えるため、あらゆる状況において禁止されるべきと記載されている。 *カーボンオフセット:自らの温室効果ガスの排出を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるという考え方(農林水産省 公式HPより)