EUがグリーンウォッシング禁止指令案を採択、日本のファッション業界への影響は?
日本における「グリーンウォッシング」の今
日本では、根拠なく「環境負荷が小さい」などと商品の品質を偽った場合には、景品表示法違反となるリスクが高まるが、グリーンウォッシングを直接規制する法律が存在しないのが現状だ。環境省が2013年に出した「環境表示ガイドライン」では、環境にまつわる適切な表示の条件として、下記の4点を挙げている。 ・根拠に基づく正確な情報であること ・消費者に誤解を与えないものであること ・環境表示の内容について検証できること ・あいまい又は抽象的でないこと また、公正取引委員会が2001年に出した「環境保全に配慮している商品の広告表示の留意事項」では、下記の5点が示されている。 ・表示の示す対象範囲が明確であること ・強調する原材料等の使用割合を明確に表示すること ・実証データ等による表示の裏付けの必要性 ・あいまい又は抽象的な表示は単独で行わないこと ・環境マーク表示における留意点 しかし、これらはいずれも「ガイドライン」のため、法的な拘束力はない。また、環境省のものでも10年以上前に出された内容であるため、今後、これらに代わる新たなガイドラインが登場することを期待したい。 一方で、現状グリーンウォッシングを直接規制する法律はないものの、日本においても少しずつではあるが、グリーンウォッシングを意識した対応が見られるようになってきた。2022年12月には、消費者庁が「生分解性」を謳った商品を販売していた事業者計10社に対して、「生分解性」の表示が「優良誤認」にあたるとして措置命令を実施。2023年10月には、そのうちの1社に対して1774万円の課徴金納付命令を発している。措置命令が下された事業者が取り扱っていた製品は、カトラリーからごみ袋、釣り用品、エアガン用BB弾まで幅広く、公表されていないだけで、既にファッション業界においても調査のメスが入っている可能性は十分にあり得る。 今回のグリーンウォッシング禁止指令案の採択により、EU加盟国に直営店を設けていたり、EU加盟国からも購入可能なECを展開していたりする場合は影響を受ける可能性がある。同様に、EU加盟国に拠点を持つ企業と取引を行う場合も、この指令の基準を満たすことを要求される可能性があるため、他人事と考えず、今から対応を進めておく必要があるだろう。加えて、近年はSNSの反応についても注視が必要だ。仮に違反事項がない場合でも、環境に配慮していないにもかかわらず、安易に「サステナブル」などと謳えばSNSで炎上するリスクが高まるため、リスク管理の観点からも現状の総点検が求められる。 平川裕 幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に広報担当として勤務。2017年に「WWDJAPAN」の編集記者(バッグ&シューズ担当)としてパリ・ファッション・ウィークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当する傍ら、ファッションロー分野を開拓する。現在はフリーランスのファッションライターとスタートアップのPR担当という二足の草鞋で活動中。無類のハイヒール好きで9cmヒールが基本。