香りによって思い出がよみがる「プルースト効果」は勉強でゾーンに入りたいときに応用できる!
学習内容を記憶に定着させるために、記憶力を最大限に発揮させる効率的な方法を活用したいものです。 数ある記憶術の中でも人気が高いのが、勉強や仕事をしている間に特定のフレーバーのガムを噛む、あるいは、決まった香りを空中にシュッとひと吹きする方法。 その上で、テストを受けたり、プレゼンテーションを行なったりなど、実力を発揮すべき場面で、事前に使っていたのと同じガムやフレグランスを使うのです。 これは、いわゆる「プルースト効果」を利用した記憶向上術。しかし、実践してみると、その効果は人によってまちまちです。
プルースト効果とは?
20世紀フランスの大作家、マルセル・プルースト。彼は「不随意記憶(involuntary memory)」という言葉の生みの親でもあります。 これは、匂いや味、音などの感覚的きっかけによって記憶がよみがえる現象を指す言葉。この現象に焦点をあてた功績の見返りとして、プルースト自身の名が冠されました。 そして、これは誰もが実際に経験しうる現象です。 道で違った他人が昔の恋人と同じ香水をつけていたケースなど、嗅覚からくる刺激がきっかけとなり、過去の鮮明な記憶が呼び覚まされることがあります。 この現象については多くの研究論文が書かれていますが、それはこの現象が、とても人間らしいものであると同時に、生理的かつ科学的だからです。
プルースト効果が実際に活用されるシーンは?
勉強法や記憶法を検索すると、このプルースト効果に関するコンテンツを大量に目にするはず。 ネブラスカ大学カーニー校では、馴染みのない香りを「脳のブースター」として使う方法を推奨しています。 個別の教科を勉強する際に、それぞれ別の香りを噴霧します。そして、テストを受ける前には、その教科を勉強する時に使っていた香りを吹き付けるわけです。 「その香りが情報を思い出す助けになる」そうです。
プルースト効果は、感情にまつわる記憶の呼び起こしが得意
ここで、理解しておくすべきポイントがあります。それは、不随意記憶は、実用的というよりは感情的である、ということ。 こちらの研究論文では、嗅覚によるトリガーは、視覚と比べて、感情にまつわる記憶を呼び覚ますうえで非常に効果的だったという結果が出ています。 というわけで、スプレーした香りやガムのフレーバーは、あなたをかつて勉強していた場所へと連れて行ってくれるかもしれません。 でも、その時に勉強していた内容の「詳細」を思い出す助けになるかというと、その保証はありません。せいぜい、勉強をしていた時に抱いていたのと同じ感情が呼び覚まされるだけでしょう。 というわけで、プルースト効果の活用は、勉強に集中するために「勉強用の特別な服装」に着替える方法と、似たような発想といえます。 「ゾーン」へ導く集中力アップのブースターになる望みはある 香りは、嗅いだ人が周囲から自分を隔絶させて「ゾーン」に入る助けにはなります。それが、集中力やアウトプットにプラスの影響をもたらすこともあるはずです。 けれども、匂いを嗅ぐだけでたちまちテキストの全文が思い出せるというような、魔法の万能薬ではありません。 化学の勉強をする際にイチゴ味のガムを噛んでおき、その後、化学のテストを受ける時に再び噛めば、確かに化学のゾーンに入ったという感覚を得るあと押しにはなるでしょう。繰り返しになりますが、これが助けになる可能性はあります。 しかし、勉強してきた事柄を本当に思い出すには、勉強に関するテクニックも併用することを忘れないでください。 こうした学習法の例としては、同時並行学習や、最初に提示されたものが、後から提示されたものよりも記憶しやすい傾向を指す「プライマシー効果(初頭効果)」などがあります。 ──2023年9月7日の記事を再編集のうえ、再掲しています。 訳:長谷睦(ガリレオ) Source: Oxford Academic, University of Nebraska ast Kearney, NCBI
ライフハッカー・ジャパン編集部