「優しい主人公になれる」自分をサブキャラだと思う人へ、ドラクエ生みの親が送る言葉
「苦労せず、楽にできること」が自分に合っていること
――堀井さんはどのようにして、ゲームデザイナーの道へ進まれたのでしょうか。 僕自身、高校時代は漫画家になりたかったんですよ。でも、漫画家を諦めてライターになりました。『セブンティーン』で雑誌ライターをして食べていたんですけど、このままじゃキツいな、将来どうしようかなと思う時期があって。そんな時、たまたま新聞で「これからはマイコンだ【※】」という記事を見て、僕は何も分からないままマイコンを買ってみました。 【※】マイコン:小型の電子制御装置 それがきっかけで、コンピューターのプログラミングを面白いなと感じ、勉強していきました。そのうち「紙じゃなくてコンピューター上に漫画をかいたらどうかな?」と思い、『ポートピア連続殺人事件』や『ドラゴンクエスト』を作ることになったんです。振り返ってみると、きっかけって大事だなと思うんですよ。ちょっとした興味が、自分を変えてくれました。 ――初期はデータ容量の制限がある中でのゲーム制作でした。「制限」への葛藤はありましたか。 「自由に作っていいよ」と言われると、いつまで経ってもできなかったりするんですよね。考えすぎちゃって。だから、何の制限もなかったら、『ドラゴンクエスト』は生まれなかったような気もするんです。制限があったからこそ、僕自身も燃えましたし、「この中でいかに作ってやろうか!」というやりがいがありました。
――『ドラゴンクエスト』の魅力の一つに、ファンが『堀井節』と呼んでいるゲーム内のセリフがありますが、それはどのように生み出されたのですか? それに関しては特に意識したことがないんですけど、「短く、雰囲気を出す」ということを考えてきた気がします。例えば、(容量制限の関係で)ひらがなしか使えなかったので、ひらがなでも意味が分かりやすいようにしました。『ただのしかばねのようだ』というセリフがありますが、『ただのしたいのようだ』と書いてしまうと、“したい”(=やってみたい)みたいに見えて分からないなと思って、“しかばね”という表現にしたり。言葉選びは気にしてきましたね。 ――そういったクリエイターとしてのセンスは、どうやって身に付けたのですか? センスを身に付けるのは、やっぱり難しいと思うんです。技術は勉強や努力で身に付くと思いますが、センスは生まれ付きのもののような気がします。ただ、僕の持っているセンスって、お子様的なイタズラが好きってだけなんです。「こう来てこう返したら、相手はビックリするかな?」みたいな感じなので、大したことないですよ。 誰しも好きな嗜好性というものがあるはずなので、自分はどういったことが得意で、なにに合っているかを見つけて、それに意識を集中して伸ばしていけるといいですよね。「自分に合っていること」というのは、「苦労せず、努力せず、楽にできること」だと思います。僕にとって、イタズラをしたり物語を作ったりっていうのは、そんなに苦労では……いや、物語を作るのは苦労ですけど(笑)。でも、物語を書き始めようと思った最初のきっかけに、苦労はなかったので。