われわれのゴールは「より良いネットワークを作る」ことではない--Extreme Networks
--クラウドアプリケーションをオンプレミスで運用する場合、どのような実行環境が必要なのか。ユーザーの環境にクラウドのソフトウェアスタックが一通りそろっている必要があるのか、あるいは仮想アプライアンスのような形で利用可能なのか。 まず、仮想アプライアンスは古いテクノロジーであり、当社ではもう使っていない。われわれのクラウドアプリケーションはクラウドネイティブで、「Google Cloud Platform」「Amazon Web Services」「Microsoft Azure」といった環境で動作しているが、動作環境を構築したのは当社であり、同じ環境をユーザーにも提供できる。イメージとしては「AWS Outposts」のようなものだと考えてもらえればよいが、数台のサーバー群に必要なインフラ環境を丸ごと構築してユーザーが希望する環境に設置できる。 われわれ自身がクラウドスタックを丸ごと構築したからできることであり、ネットワークベンダーで同じことをしている競合はないはずだ。現在は日本も含めオーダーを受けてから1時間以内にクラウド上でもオンプレミス向けでも環境を用意できる体制となっている。 日本では大地震などの自然災害が発生するリスクがあることから、万一の際にネットワーク接続がダウンして病院などのミッションクリティカルな環境での機能に影響が及ぶことを避けるため、必要な全ての機能をオンプレミスでそろえて外部接続に依存せずに運用を継続できるようにしたいという意図がある。 --AIについてはどのような取り組みを行っているのか。 生成AIをプラットフォームに組み込むという点に関しては、当社ももちろん実行している。しかし、多くの企業がAIOps(AIによる運用支援)に注力しているのに対し、われわれはAIOpsに限定せず、より広範な活用を考える必要があると認識している。AIユースケースには大きく3つのフェーズがあると私は考えている。最初のフェーズは「Augmentation」(増強/拡張)だ。例えば、人間が行う業務をAIがより迅速に/高品質に行えるよう手助けしてくれることがある。 現在は第2フェーズに入っており、従来は人間が行っていた幾つかの業務をAIが完遂(Replacement)できるようになっている。そして最後の段階は「Creation」(創出)だ。この段階の重要性について考えている人はまだ少ないようだが、AIがこれまで存在しなかった新しいものを生み出していく段階だ。 多くの企業が現在取り組んでいるAIOpsは、Augmentationのユースケースだ。ネットワーク管理を自動化したり、異常検知の精度を高めたり、トラブルシューティングを効率化したりできるのがAugmentationフェーズのユースケースである。コストや時間を減らせるが、劇的な削減にはつながらないので、より大幅な削減を実現したいならReplacementのフェーズに期待することになるだろう。Replacementのフェーズではリスクの削減も可能になる。Creationのフェーズでは、利益の創出が期待できる。 当社はAIプラットフォームをわれわれのパートナー企業に提供し、その上に新たなAIサービスを構築することで新たな収益源を作り出してほしいと考えている。われわれは、AIOpsよりも広範な領域を見据えている。 さらに言えばAIOpsは差別化要素にはなり得ないので、AIOpsに注力するのではなく完全なAIプラットフォームを構築しているのだ。典型的なAIOpsの取り組みでは、提供企業は外部の大規模言語モデル(LLM)やビッグモデルにさほど多くない量のデータを渡して出力を得る単純なAIアプリケーションの形を採っているが、当社のAIプラットフォームは全てのデバイスからのリアルタイムデータやテレメトリーデータを収集しており、この膨大なデータをさまざまなAIモデルに渡して活用できる。 AIでは、データセットが大きくなればなるほど、得られる価値もさらに大きくなるため、われわれのAIプラットフォームは単純なAIOpsユースケースを上回るはずだ。