日本人の約7割が睡眠に悩んでいる!睡眠の仕組みと良い睡眠をとるための対策|公認心理師が解説
2023年に全国の10-60代男女1200名に対しておこなわれたウェルネス総合研究所の調査では、約7割が睡眠の悩みがあると回答し、質の低い睡眠や朝すっきりと起きられない実態があると発表している。そして、睡眠の悩みがあるにも関わらず、約半数が「見て見ぬふり」をしているとのこと。睡眠は私たちが生きていくために最も重要なものです。今年こそ、「見て見ぬふり」をせず、しっかりと対策をしていきましょう。 〈音声動画〉寝たまま聞くだけ【体と脳の疲れをとる、眠る前の瞑想】体の感覚に意識を巡らせ、脳を休ませる(10分) ■睡眠の仕組み 睡眠は心と体を休めるために不可欠なものです。そして、睡眠は脳や体を休めるだけではありません。私たちは寝ている間に記憶の整理をしたり、神経細胞ネットワークの効率化、脳の清掃作業をしたりします。脳の清掃作業とは、脳細胞の中にある通路が広がり、そこに脳脊髄液が流れ、蓄積した老廃物を押し流す作業です。このように私たちが健康的に生活するために睡眠は欠かせないものです。しかし、私たちは時に睡眠を疎かにしてしまうことがあります。それが習慣化すると睡眠が悩みの種になってしまいます。 私たちが夜に眠くなる仕組みは、睡眠中枢と呼ばれる「副外側視索前野」と「メラトニン」というホルモンが大きく関係します。私たちの疲労やストレスなどが一定のラインを超えると、睡眠中枢のGABAという神経細胞が活動し、眠りの信号を送ります。そして、松果体から分泌されたメラトニンというホルモンが深部体温を低下させ、身体を眠りに適した状態へと誘います。実は私たちの体内時計は1日25時間になっており、地球の自転と1時間ずれています。それを毎日調整するのが太陽の光です。朝起きて光を浴びることで体内時計がリセットされ、メラトニンの分泌が止まります。そして、15時間前後で再び分泌されます。つまり、毎日のリセットがないと睡眠リズムはどんどん「夜ふかし」の方にずれてしまうのです。 ■起きる時間から調整しよう 私たちは眠れない時に「眠れない…どうしよう」「このままだとまずい」とぐるぐる考えて、余計に焦って眠れなくなってしまうことがあります。「眠らなきゃ」と焦れば焦るほど悪循環に陥りやすくなります。眠ることに躍起になるよりも、「起きる時間」から整えていきましょう。毎日同じ時間に起き、朝起きたらカーテンを開けて日の光を入れます。余裕があれば、自動開閉カーテンを購入し、タイマーを設定して起床時間の少し前からカーテンを開けて日の光を徐々に浴びるものオススメです。(尚、自動開閉カーテンは、ネット販売で6000円前後から購入可能です。)規則正しい起床時間を続けることで、段々と入眠時間も整えられていきます。夜に早く眠ることよりも、まずは「朝」からはじめてみましょう。また、予定がないと朝にどうしても起きられないという人は、「朝ヨガのクラスを予約する」「朝にやる作業を決めておく」等、あえて予定を入れることもおすすめです。 ■メンタルヘルスの病気と不眠の関係 不眠が続くことで脳の疲労が蓄積し、神経伝達物質のバランスが乱れて心の病気になるリスクも高くなることが考えられます。また、うつ病の症状の一つに不眠があります。不眠だからメンタルヘルスの病気になりやすいのか、メンタルヘルスの病気になったから不眠があるのか判断するのは難しいですが、メンタルヘルスの病気と不眠には関係があるといえます。また、発達障害の人は睡眠障害を併発しやすいと言われています。発達障害は脳の覚醒レベルに特徴があるため、夜に眠れない、日中に過度の眠気があるなど、さまざまな睡眠の悩みにつながりやすくなります。このように様々なメンタルヘルスの病気と不眠には関連があるため、不眠に悩んでいる場合は放置せず、専門家に相談することがおすすめです。 参考文献等: ・依存症トラウマ発達障害うつ「眠り」とのただならぬ関係 アスク・ヒューマン・ケア ・「日本人の約7割が、“睡眠バランス”が乱れている可能性あり 睡眠に悩んでいるにも関わらず、約半数が「見て見ぬふり」している実態が明らかに」一般社団法人ウェルネス総合研究所 ライター/石上友梨(臨床心理士、公認心理師)
石上友梨