破産寸前から復調、紆余曲折を経た「ボルサリーノ」の現在地
リブランディング効果で徐々に復活、老舗ブランドの今
コロナ禍収束以降は、消費動向の変化から世界的にラグジュアリーブランドの売れ行きが好調となったことに合わせて、ボルサリーノの“ラグジュアリーブランド化”施策も奏功し売上が徐々に復調。「カジュアル化・ストリート化が加速したコロナ禍からトレンドも変化し、ハットが再び見直されて着用者が増えていることも復調の要因だと思います」と担当者は分析する。 そんなボルサリーノの現在の売上の主軸は、やはりブランドの代名詞とも言える「中折れ帽」を中心とした定番品だ。ツーリストのバカンス需要が高く、トレンド感のある華やかなデザインが人気のイタリアやフランスでも、売上の約60%は定番品で構成。バカンス需要が乏しい日本では、その構成比は約80%にも及ぶ。 ボルサリーノの帽子は紳士向けのイメージが強いこともあり、ジェンダー別の売上では国内外問わずメンズが約85%、ウィメンズが約15%とメンズが圧倒的。メンズの売上は世界的に既に天井が見えてしまっていることから、ブランドとしては近年、売上規模拡大を目指しウィメンズ強化に取り組んできた。 その施策の一環として、同ブランドでは非対称的なジェンダー別のマーチャンダイジング方法を採用。メンズは定番品のみを展開する傍ら、ウィメンズは近年新しくデザイナーを起用し、春夏と秋冬の年2回シーズナルコレクションを提案する代わりに定番品は存在しないという、ユニークな商品ラインナップを打ち出してきた。しかし、思うような成果が得られなかったことから、2025年春夏シーズン以降はウィメンズのデザインの方向性を再度見直し、メンズ定番品のウィメンズ版として「シンプルな中折れ帽」を訴求していく予定だという。 日本国内でも、PR会社と連携したウィメンズ強化の施策を独自に展開。「2024年春夏シーズンから、メンズ定番品の中折れ帽をはじめとしたユニセックスな帽子を積極的に女性誌にリースしコーディネート提案することで、“ボルサリーノ=紳士帽子”のイメージを払拭するべく取り組んできました」(中央帽子担当者)。 一方、メンズに関しては、近年は「クワイエット・ラグジュアリー」がトレンドになった影響もあり、日本ではアイコンの中折れ帽だけでなくキャップの人気も上昇。有名ラグジュアリーブランドも使用しているという、上質なイタリアンメイドのウールや撥水ナイロン素材にゴールドのブランドロゴをさりげなくあしらった上品で洗練されたデザインが、子どものいる富裕層の30代男性などを中心に好評を得ているそうだ。