<一球入魂・’22センバツ木更津総合>第1部 軌跡/1 「足りないもの」克服へ 声掛け合い、団結力高める /千葉
6年ぶり4回目のセンバツ出場の知らせが、グラウンドで待つ部員に伝えられた1月28日午後3時半ごろ、曇りがちだった木更津の空に太陽が姿を見せた。マスク越しにも分かるはじける笑顔を、強い日差しが照らし出した。 甲子園出場をつかみ取ったチームのこれまでの道のりは、平たんではなかった。「マイナスからのスタートだった」。昨夏の甲子園出場がかかった大一番で、2年生ながらマスクをかぶった捕手の中西祐樹主将(2年)は、こう振り返った。 2021年7月21日、ZOZOマリンスタジアム(千葉市美浜区)であった第103回全国高校野球選手権千葉大会決勝。3年ぶりの夏の甲子園出場を狙う木更津総合は、春夏連続出場がかかった専大松戸と対戦した。前年夏の県大会決勝と同カードとなった炎天下の試合は、異例の展開となる。 二回に木更津総合が先制すると、専大松戸は五回に逆転。木更津総合が八回に3点差を追い付くと、九回からスコアボードには「0」が並んだ。延長十三回タイブレークの末、専大松戸のサヨナラ満塁本塁打で約4時間に及ぶ接戦は幕を閉じた。 この日の夕方、グラウンドに戻った部員たちはセンター付近に集まり、3年生と1、2年生が向き合うように整列した。当時の主将、山中海斗さん(3年)が「行けなかった甲子園に行ってほしい」と後輩たちへのメッセージを伝えた。下を向く部員たちに中西は力強く誓った。「この悔しい思いを胸に、春と夏の甲子園に出られるようにします」 新チームは翌22日に発足。秋季大会予選の開幕まで約1カ月、まずは県大会優勝を目指して始動した。 五島卓道監督は最近、上位まで勝ち進みながら、あと一歩で甲子園を逃してきたチームに足りないものがあると感じていた。その思いは中西も同じで、夏の大会に出場したいずれも2年生の越井颯一郎投手と山田隼外野手、菊地弘樹内野手らも共有していた。 五島監督が期待したのは「キャプテンシー」だった。ピンチにも臨機応変に対応するためには、「選手一人一人の発信力を高めたい」と考えた。練習中に積極的に声を掛け合うことで、一つでもエラーを減らし、団結力を高めて目の前の課題を突破する――。中西は誰よりも声を出し、見本となるように心がけた。 新チーム最初の公式戦となった8月の秋季県大会予選で、柏と千葉黎明を続けて破った。9月19日の県大会初戦で磯辺を17―0で完封し、大きく弾みをつけた。 ◇ センバツ出場が決まった翌日の1月29日、選手たちはいつもと変わらぬ厳しい練習に取り組んでいた。「今の送球じゃ2点取られているぞ」。ワンプレーごとに、中西の鋭い声がグラウンドに響く。「常に一生懸命でいたい。手を抜きたくない」。昨夏、3年生らの前で宣言した中西は真剣な表情でそう語った。=つづく ◆ 木更津総合高校(木更津市)は、3月18日から開催される選抜高校野球大会への出場を決めた。夢の舞台をつかみ取るまでの道のりを振り返る。(この連載は長沼辰哉が担当します)