「エディオンピースウィング広島」専門家はどう見た? 期待される平和都市の新たな“エンジン”としての役割
スタジアム内部へつながるゲートは2階と3階に分かれます。スパイラル広場に面したエントランスは外部コンコースと連続する大きな開口部となっており、こけら落としではまだ使用されていませんでした。階段を上り3階のゲートをくぐるとここで一気にスタジアム内部の視界が開けます。大屋根の大空間、眼下に広がる青々としたピッチ、ここまで空間演出的にエントランスアプローチを作り込んでいるサッカースタジアムについて筆者は記憶にありません。今回のこけら落としで特に印象深かった体験でした。
スタジアムは満員御礼、観客席は人でいっぱいなのにコンコースに余裕があるのが特徴的です。3階のメインコンコースは600mのぐるっと一周周回できる循環動線になっています。600mは飽きることなく周回できる適度な距離といわれており、マツダスタジアムのコンコースの距離も同じく600mとなっています。サッカーの場合、サポーター間のゾーニングが重要となりますが、サポーターが集まるエンドスタンドについては階段などを利用した階移動による回避ルートが設けられているなど配慮された動線計画が作られています。
コンコースからピッチを望む部分には車いす席ともなるテーブルシートが設けられており、飲食しながらの観戦が可能です。コンコースから見える外の風景は広島城や旧太田川、広島平和記念公園などを取り込み、周回しながら広島の風景の縮図のような体験が得られます。現在整備中となる東側の公園が完成した際にはさらに街に溶け込んだ風景になると思われます。
大迫力のメリハリの聞いた観客席計画
観客席の計画にメリハリが効いているのも特徴です。 観戦体験に最適化されたスタンドの勾配と座席となっており、例えば、ピッチ際の1階席は選手の目線に近づけた臨場感のある視線設計になっています。緩やかなスタンド勾配であるにもかかわらず前列の観客が視線の邪魔になるようなストレスが無く観戦できる緻密な設計となっています。