「エディオンピースウィング広島」専門家はどう見た? 期待される平和都市の新たな“エンジン”としての役割
街に溶け込んだ“風景を取り込む”スタジアム
敷地は世界遺産である原爆ドームからもほど近い、美術館や図書館、こども科学館や図書館などの文化施設が集積された文教地区であり、広島グリーンアリーナ、中央公園ファミリープールなどが集まる広島を代表するスポーツクラスタの一部である広島市中央公園となっています。近年では広島東洋カープの本拠地であった旧広島市民球場跡地につくられた「ひろしまゲートパーク」など新たな賑わいの場として親しまれています。 広島平和記念公園の「平和の軸線」と呼ばれる原爆ドームを望む延長上に位置しており、東には広島城、西は旧太田川に接した東西に広い敷地で、コンペ時には施設の配置も含めて審査が行われました。「平和の軸線」を受け止める考えがさまざま出るなか、旧太田川に面する西側にスタジアムを配置して川側にスタジアムの顔を出しながら、敷地東側を公園として開放するレイアウトが採用されました。
実際に近県から訪問した場合の経路を見てみましょう。JR広島駅に降り立って、市電(路面電車)を使って原爆ドーム前駅に降り立つと、そこにはまず「ひろしまゲートパーク」が広がります。旧広島市民球場跡地を利用した公園広場で、屋外ステージや商業店舗などが組み込まれたイベント広場となっています。平和記念公園から原爆ドームに伸びる「平和の軸」に沿ってプロムナードが設けられており、新スタジアムはその先にあります。 緑の屋根が特徴的な広島グリーンアリーナを脇に見つつ、プロムナードは緩やかなスロープに連続しブリッジを介して新スタジアムにつながります。こけら落としはほぼ満席となる約2万6000人が来場していましたが、混乱もなくスムーズに人が流れていました。
ブリッジを超えた先には広々とした外部コンコースが広がります。階数でいうと2階に相当するコンコースはスタジアムと公園の間をつなぐ開放的な場所となっており、スタジアムと公園をつなぐバッファとして機能します。 ブリッジを超えてまず目に入るのがらせん状の吹抜けを持つスパイラル広場。スタジアムのウェルカムスペースとしてスパイラル状のスロープが1、2階をつなぐとともに、ミュージアムやピッチにつながる大型搬入口などが広場に面しています。この外部コンコースはスパイラル広場の他にも段々状の芝生の丘などで東側で整備中の公園と一体的に利用できるようになっており、スタジアムで試合が開催されていないときにも自由に行き来できるスペースとなっています。