「雪月花」と「急行」② 昼食は新潟の宝石箱だった!の巻 帰ってきた令和阿房列車で行こう 第四列車
安田瓦を敷き詰めたデッキを通り抜け、2号車の車内へ先に入ったお客さんから「ほぉ」という感嘆の声が漏れた。 天井まで届こうかという巨大な窓と高級感あふれるソファのコントラストが素晴らしい。 先頭部は運転士の頭越しの展望を独占できる展望ハイデッキになっている(この席はあっという間に予約が埋まるそう)。 1号車は越後杉をふんだんに採り入れたインテリアで明るい雰囲気だが、冴(さ)えない中年男2人組には、落ち着いた2号車が似合っている。 上越妙高を発車した「雪月花」は糸魚川行きなのだが、いったん逆方向の妙高高原に向かう。晴れていれば妙高山の雄姿を眺められるからだ。 発車するやいなや、ウェルカムドリンクが配られる前に、御当地の地酒「純米吟醸『鮎』」を所望した。何しろ終点まで2時間39分なので、一刻もゆるがせにできない。「鮎」は、やや甘口ながらすっきりしており、口開けの一杯にふさわしい。 「朝の一杯は、極楽ですね」 サンケイ1号君の率直な感想に、異論があろうはずがない。 二本木駅でスイッチバック(急勾配の坂を上るため進行方向をいったん逆にして進むこと)のため停車したところで、三段重ねのずっしりとした木箱入りの昼食が配られた。 まだ午前11時過ぎだったので、しばらく後で蓋を開こうかと算段していると、1号君はさっさと掛け紐(ひも)をほどいていた。 「貴君、朝は食べなかったの」と聞くと、「東京駅の売店に午前7時半に入荷した崎陽軒のシウマイ弁当を食べました」としれっと言う。 「シウマイ弁当には、掛け紐ありとなしの2種類あるの知ってました?」 そんなの知るわけない、と答えると、得たりやおうと「紐ありは横浜でつくったもので、ないのは東京製なんですよ」と鼻をふくらませた。 「どっちでもいいじゃないか」と突き放そうかと思ったが、名カメラマンの士気をくじいてはいけないので、「なるほど」と、大きくうなずいた。 ウェルカムドリンク(ソフトドリンクも選べる)として指名した新潟生まれのスパークリングワインも食欲をそそる。