【チャンピオンズC】1番人気がジャパンカップダート時代を含め9勝 下半期のJRAダートGⅠの「記録」を振り返る
ダート王者決定戦でも最多勝を誇る武豊騎手
また、先週は武豊騎手がジャパンCで勝利し、同レースの最多勝利騎手となった。チャンピオンズC(ジャパンカップダート時代含む)の騎手の勝利数をランキングにすると、2位タイが2勝の藤田伸二騎手、C.ルメール騎手、M.デムーロ騎手。そして1位が4勝の武豊騎手とここでも同騎手の名前があがる。 当レースは2000年に創設され、第1回はウイングアローと岡部幸雄騎手のコンビが勝利。武豊騎手は第2回にクロフネとのコンビで勝利し、2004、05年にはタイムパラドックスとカネヒキリで連覇。さらに、1年おいた2007年にヴァーミリアンとのコンビで4勝目をあげた。 武豊騎手が当レースで初勝利をあげた相棒クロフネは、当時ダート2戦目。元々は「マル外」にクラシック競走が開放された初年度に登場した名馬で、重賞初挑戦のラジオたんぱ杯3歳Sこそアグネスタキオン、ジャングルポケットに続く3着と敗れているが、毎日杯、NHKマイルCと連勝した芝の実力馬だった。 その後は日本ダービー5着、神戸新聞杯3着と世代上位の走りを見せていたが、目標としていた天皇賞(秋)は外国産馬の出走枠2頭にメイショウドトウとアグネスデジタルが入ってきたため出走を断念し、ダートの武蔵野Sに向かうことに。すると、レースでは2着馬イーグルカフェ(2002年のジャパンカップダート勝ち馬)に9馬身差をつけるという抜群のパフォーマンスを披露し圧勝した。 続くジャパンカップダートでは、向正面の半ばから位置を上げ、4角では先頭。その後は後続を引き離す一方で、前年覇者ウイングアローらに7馬身差をつけて完勝、一気にダート界の頂点へと上り詰めたのだった。しかし、この後に屈腱炎を発症し引退。種牡馬としてスリープレスナイト、カレンチャン、ホエールキャプチャ、アエロリット、ソダシといった多くの名牝を送り出している。 同じく武豊騎手とのコンビで勝利を挙げたカネヒキリとヴァーミリアンは同期のライバル。カネヒキリは3歳で当レースを制したのち、2008年に6歳でC.ルメール騎手とのコンビで再び勝利。ジャパンカップダートで2勝目をあげたのは同馬が初めてだった。 何度も屈腱炎を乗り越えて復活し、「砂のディープインパクト」とも呼ばれた名馬だった。引退後はロンドンタウンやディオスコリダーを輩出。ライバルのヴァーミリアンはリュウノユキナやノブワイルド、ノットフォーマルを輩出している。 また、当レースで唯一の「連覇」を達成しているのが、藤田伸二騎手とトランセンド。ワイルドラッシュ産駒の素質馬で、2010年の4歳シーズンにみやこSで重賞初制覇を成し遂げると、続くジャパンカップダートでGⅠ初出走初制覇を達成し、ダート王者として君臨した。 翌年はフェブラリーS、マイルCS南部杯を勝利、ドバイワールドC、JBCクラシックを2着、締めくくりの当レースを押し切り勝ち、とほぼ完璧な1年を過ごした。引退後は種牡馬になり、産駒としてはジェミニキングやフリーフリッカーなど障害競走で素質を見せる馬を送っている。 今年はレモンポップによるトランセンド以来の連覇なるか、ウィルソンテソーロやペプチドナイルらが意地を見せるか、それとも伏兵が台頭するか。ダート王者決定戦からも目が離せない。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん