「子どもへの虐待が止められないんです」…我が子を傷つけずにはいられない42歳主婦が訴える「DV夫と義両親」への恨み
義両親の「手のひら返し」がはじまった
陽一さんは、不快な表情を浮かべる夏希さん夫婦と目を合わせることもなく、「やっぱり長男が後を継ぐ方が自然だろ?」と義両親に媚びていたという。後日わかったことだが、陽一さんは会社をリストラされており、是が非でも収入源が欲しかったらしい。 ただ…、「そんな急に言われてもねえ…」と戸惑っていた舅と姑の顔が一瞬ほろこんだのを、夏希さんは見逃さなかった。 「まさかとは思いつつも、イヤな予感しかありませんでした」 数日後、夏希さんは義両親の「長男至上主義」に基づく「手のひら返し」が始まったことを思い知る。残念ながら令和の時代においても、こういう事はまま起きている。 「義父は義兄だけを畑に連れて行くようになり、夫は自宅の作業場で農機具の手入れをさせられるようになりました。さらに義父は義兄を『新後継者』として農協を始め、関係者にこっそり挨拶回りまでしていました。完全に夫は部外者扱いです。私の方も兄嫁に仕事を教えるように言われました」 そんなある日、離れに義両親があらたまった様子でやって来たという。どことなくバツが悪そうにも見えるふたりの表情に、再び「イヤな予感がした」という夏希さんだったが、義両親の要件は想像以上だった。
温厚だった夫のDVがはじまった理由とは
「『ここ(離れ)をつぶして陽一の家を建てる』と言われたのです。つまり私たちにこの家を出て行けということです」 あまりにも身勝手な仕打ちにあきれた哲史さんが呆然としていると、義両親は間髪入れずといった感じで「引っ越し先はもう決めてあるから」と借家の賃貸契約書を差し出したという。 「今の家からは目と鼻の先です。事後承諾というのがどうにも許せませんでした。ただ、家賃は義両親が出してくれると言うし、あきれすぎて、すぐにどうでも良くなりました」 引っ越しと同時に「もう手は足りているから」と、夏希さんも農家の手伝いはお役御免となったが、 「夫は家の仕事を続けることになりました。素人同然の義兄が使い物にならなかったからです。それなのに休日や給料、作業内容など、あらゆる場面において、義両親は義兄ばかりを贔屓し、夫は蔑ろにされ続けました。そして夫がその不満や怒りのはけ口をDVという形で私にぶつけるようになりました。これがDVの始まりです。温厚な人だったのに…」 これまで声を荒らげることすらなかった哲史さんの暴力は、夏希さんの子どもへの虐待に繋がり、壮絶な「DV連鎖」へと発展して行く…。 つづく後編記事『「我が子を傷つけずにはいられない」…DV夫の妻への暴力が、子どもたちへの虐待に波及する「DV連鎖」の闇』では、崩壊していく一家の絶望的な顛末を詳報します。
清水 芽々(ノンフィクションライター)
【関連記事】
- 【つづきを読む】「我が子を傷つけずにはいられない」…DV夫の妻への暴力が、子どもたちへの虐待に波及する「DV連鎖」の闇
- 莫大な資産をめぐり、地方の名家で勃発した「跡取り問題」…当主夫人が「実子3人全員は不適合」と明かす「まさかの理由」
- 「歯は半分抜け落ちた」「下半身は深刻な裂傷」で血まみれに…継母と夫から50年以上、乱暴されてきた58歳女性が明かす「壮絶すぎる半生」
- 妻に子どもを産ませて束縛する「多産DV」の闇…それほど好きなわけでも可愛がるわけでもないのに、子どもを欲しがる「まさかの理由」
- 35歳母親と「ベビーシッター」を名乗る男たちから受けた、性的虐待の数々…15歳の少女が社会に向けて「私の話を聞いて欲しい」と語る理由