黒澤映画の傑作『七人の侍』公開70周年の今、全米で再び脚光を浴びる理由
戦後ニッポンとの共鳴
この作品に描かれた世界観は、明確だった階級制度の壁が崩れ落ちる一方で、急速な近代化を進めていた当時の日本社会と共鳴していた。 農家の娘・志乃(津島恵子)に恋する武士の岡本勝四郎(木村功)や、武士ではないことがバレても戦場で実力を証明する三船の菊千代は、ありふれた映画的な人物像にも見える。だが新しいアイデンティティーを模索していた戦後の日本人にとって、古い規範からの逸脱というテーマは深いレベルで心に響いた。 『七人の侍』のストーリーは非常にシンプルで、いくつものエネルギッシュな見せ場がある。この207分の大作の舞台は、盗賊と化した野武士が村々を襲い、収穫を奪い、女性を誘拐する時代。以前にもひどい目に遭っていた村人は再び盗賊の標的になると知って、やむなく侍の力を借りて村を守ろうと決意する。 町に出て侍を雇おうとした村人たちは、浪人・島田勘兵衛(志村喬)の勇気と創造的思考に感銘を受ける。村人に説得された勘兵衛は仲間を集めるが、その顔触れは氷のように冷徹な剣士の久蔵(宮口精二)、優れた戦術家の片山五郎兵衛(稲葉義男)、熱心な見習いの勝四郎など。そして最後に真の主役・菊千代が加わる。 どこかで聞いたような筋書きに思えてしまうのは、『七人の侍』が何度も西洋の映画に翻案されているせいだ。いい例が西部劇『荒野の七人』(1960年版と2016年版がある)とSF映画『宇宙の7人』(80年)だ。コメディーの『サボテン・ブラザーズ』(86年)やアニメ映画『バグズ・ライフ』(98年)にも『七人の侍』のパターンが投影されている。 西洋映画に最も顕著な影響を及ぼしたのは、勘兵衛がチームを編成するくだりだ。彼が候補を見定め、実力を試した上で仲間に引き入れるプロセスは、見ていて単純に楽しい。新しい侍が仲間に加わると思いきや、金も名声も得られないと分かるとあっさり誘いを断る場面も素晴らしい。仲間選びの場面は『特攻大作戦』(67年)や『ブルース・ブラザース』(80年)、『オーシャンズ11』(2001年)などにも採り入れられている。 さまざまな映画に影響を及ぼしたもう1つの展開は、村人(そして私たち観客)と勘兵衛との出会いだ。町で盗賊が子供を人質に立て籠もる騒ぎが起きると、僧侶に変装した勘兵衛が現場に乗り込み、見事に子供を助ける。本題のミッションに入る前に「ミニミッション」を見せて主人公を紹介するこの手法は、今ではとても一般的だ。