「普通、アソコを整形します?」銀座の元トップホステスが「人が変わるまで」整形し続けたヤバい理由
店には、オーナーママを筆頭にチーママが3名、総勢20名の華麗なホステスたちがいたという。エミリさんは、「新人だけど、負けてはいられない」と意気込んだ。 「毎日アフターをして、指名を増やすことに専念しました。日給が徐々に上がったころ、小百合(仮名22歳)というホステスが他店から引き抜きで入ってきたんです。 年齢は1つ違いですが、私のようにヘルプホステスではなく、「売り上げ」のホステス。入店初日から「祝・入店」と書かれた祝花が飾られ、店は満席。驚きましたね」 和風顔の小百合は目立つ美人ではないが、気配りとトーク術は群を抜いていた。しかも、彼女のお客様は経営者や一部上場の企業幹部など大物ばかり。当然、売り上げも大きい。 店側はあからさまにえこひいきをしていた。 「まず、オーナーママの態度が変わりました。『小百合ちゃん、今月も期待してるわよ。これ、私のおさがりだけど、よかったら着て』と高級ブランドのドレスを渡していたんです。小百合は丁重にお礼をしたあと、そばにいた私に歩み寄ってきました。 その時、彼女から言われたひとことは、当時の私にとって人生で最もショックなものでした」 ――アンタ、目の下の小じわが目立つわよ。私のお客様にブサイクづら見せないで! エミリさんは続ける。
「唖然としました。私がブサイク? 確かに私の目は大きくて涙ぶくろもふっくらしていますが、まさかそんな酷いことを言われるなんて……」 結果、エミリさんは美容クリニックの門を叩く。芸能人も通うことで評判の青山にある美容クリニックだった。 「最初は、目の下のシワを目立たなくする『ヒアルロン酸注射』でした。麻酔を塗った眼下の皮膚に数か所、注射するんです。痛みはゼロではありませんが、キレイになることのほうが優先でした。 せっかくだから唇もふっくらさせようと唇にも注入し、頬のほうれい線を消すために、口周りにも……。トータル20万円かかりました」 エミリさんは「20万円で美しさが買えるのなら、安い方」だと笑う。 「私自身が商品ですから。リンゴだってキレイに磨いてツヤを出し、箱に入れたら一気に価値が上がりますよね。それと一緒。 生まれ持った美しさに、手を加えるだけで価値が上がり、自分自身も居心地よく生きられるなら、お金は惜しくありません」 エミリさんは続ける。 「ヒアルロン酸注入後、お客様からは『表情が優しくなった。洗練された』と大好評。それを機に、定期的にクリニックに通うようになったんです。目はぱっちりしていたので、次はもっと高くキレイな鼻を手に入れたくなりました」 隆鼻術の費用は血液検査や薬代も含め50万円だ。美容医療は保険適応ではないため、医師個人が自由に価格を決められる。エミリさんの通うクリニックは腕の良さでも評判だった。どんなに高額でも、他のクリニックに変える選択は無かったという。 「隆鼻術にはシリコンプロテーゼを入れました。鼻の穴から入れるのですが、これがかなりキツかった……ドロドロした液が鼻から口に流れこみ、息をすることすらままならない状態になりました。私が苦しんでいると、ナースが『液体は飲んでください』と指示してきて……。 成分も分からない苦みのある液体を必死に飲みくだしました。局所麻酔のせいで痛みはありませんが、とにかく苦しくて『早く終わって』と心で叫んでいましたね」 術後は顔面がかなり腫れるため、あらかじめ「祖父が入院することになり、その手伝いのため」と偽って、一週間ほど店を休んだという。 「手術後は腫れて変形した顔を見て『本当に綺麗になれるの?』と悪夢を見るほどの不安に包まれました。鼻の両脇が盛り上がって紫色に変色し、まるで化け物です。でも医師が言った通り徐々に腫れも引き、8日後には店に復帰しました。 お客様やホステスは『すごくキレイになった』と大絶賛。周囲には『看病疲れで、5キロ痩せたの』と言いました。 実際、腫れが引くまで食事も摂れませんでしたし。整形した個所が目だないよう、ロングヘアをアップにして雰囲気をガラリと変えたことも良かったです」 完璧な美貌を手に入れたエミリさんは、店内を歩くだけで「あの子を呼んで」と指名が増えたという。 しかし、客たちに「美しい」と称賛されるたび、美への追求は加速した。 エミリさんは続ける。 「小百合に言われた『ブサイク』という言葉が私の心から消えることはありません……。その頃、小百合はナンバーワンになっていました。『絶対トップになる』という野心を胸に脂肪吸引、リフトアップと続けざまに手術をするようになったんです」 【後編】では美に取り憑かれたエミリさんの「美容整形遍歴」を詳しくお伝えしたい。 取材・文/蒼井凜花