伊藤万理華にインタビュー。ビザールなラブストーリー『チャチャ』主演
周りと波長が合わない自分も愛する。「私みたいな子にはきっと救いになる映画」
『チャチャ』(10月11日公開)は、まるでジェットコースターのようにスリリングな恋愛映画だ。主人公は、野良猫のように自由奔放に生きているチャチャ。偶然出会ったミステリアスな青年、樂(らく)に惹かれて自宅に転がり込むも、まるで手応えのない片思いに悩んだ末、さらに彼の恐るべき秘密を知ることに……。主演の伊藤万理華はこの役を演じた経験が、自分自身を認めることにもつながったと話す。どんな挑戦があったのか聞いた。 【記事中の画像をすべて見る】
――まず主人公チャチャを演じる中で、印象深かったことから教えてください。 自分なりにチャチャを落とし込んで現場に臨んだのですが、初日に酒井麻衣監督から「何かが違う」と指摘されました。その上で、「伊藤さんのままでやってください」と演技指導してくださって。“そのままの自分ってなんだろう?”と立ち止まる瞬間が多い撮影期間でした。自己表現は個展を通して何度もやってきたのに、お芝居となるとこんなに大変なんだと痛感しました。最終的には、“誰かと対話している時の自分って、どういう感じだろう?”と考えることがヒントになりました。監督と素直に話しながら、表情から声色まで徹底的に直していただき、過去のやり方を全て壊して演じたつもりです。私にとって必要な経験でした。 ――チャチャのファッションにも、伊藤さんのこだわりが詰まっているとか。衣装の小泉美智子さんと共にどんなことを気にかけましたか? 初めからキャラクター像がはっきりあったわけではなくて。彼女についてほとんど何もわからない状態から、まずは小泉さんが用意してくださった衣装をみなさんの前で試着して確認していきました。自分の中のイメージとすり合わせたり、話し合ったりしながら、“チャチャの人となりを認識できて、なおかつこれまで見たことのないスタイル”を目指していった感じです。 ――いつも透け感のある、空気をまとうようなチュールスカートを履いているチャチャ。ガーリーだけど、どこか尖った服装が特徴的です。 足元は常に、ゴツめだけど歩きやすいブーツ。彼女の空気感ってこう、どこか周りから浮いているような感じ。街中でヘッドホンから流れる音楽に合わせ、一人でダンスしたりするような子ですから。でも、そういう方向性を最初から言語化できていたわけじゃなくて、気づけば自然とそういう衣装を選んでいた。一つ一つ、「これはなんか違う」「これはいい感じ」と、感覚で取捨選択していきました。正解も不正解もないのが、ファッションの一番面白いところだと思うので、チャチャがおしゃれなのかどうかは、映画を観たお客さんが自由に感じとっていいと思います。 ――劇中では、ソリが合わない会社の同僚から「あの組み合わせ方はないよね」などと陰口をたたかれていました。 そうですね。今振り返れば、チャチャなりの美学みたいなものが伝わる装いを目指していたように思います。衣装合わせの段階で、まだそこまではっきりと言語化できていたわけではないのですが。 ――にもかかわらず実際に作品が出来上がると、示し合わせたように衣装がキャラクターとリンクしているから面白いです。 本当に不思議だなって思いました。実はこの役が決まった当初、もちろん嬉しかった反面、自分に担えるかどうかの自信がなくて。というのもチャチャは容姿的にもかわいらしい、恋する女の子。変わってはいるけれど、すごく純粋です。ずっと中性的な役が続いていて、こういうキャラクターを演じたことなかったので、「どうしよう?自分にできるのかな」って不安でした。あえてすごくいやな言い方をすると、いわゆるかわいい子だけが、かわいい子を演じられるんだと勝手に思い込んで、自ら塞ぎ込んでいたというか。女の子でいることを半分諦めていた時期があるんです。