伊藤万理華にインタビュー。ビザールなラブストーリー『チャチャ』主演
――とても意外です……! 別の魅力を探す方が楽なのかなって思っていたら、この役をいただいて、こんな巡り合わせがあるんだなと驚きました。その一方で、自分もチャチャみたいに浮いた存在だったことがあると自覚してもいるから、物語には初めから共感できました。昔からファッションやその他の言動で、周りのみんなと波長が合わず、場をシーンとさせるみたいな瞬間が何度もあって。劇中で樂(らく。中川大志)へのやりきれない片想いを通して、チャチャの心の奥底にある繊細な部分や、傷ついている様子を表情の変化で知らせていくことがこの映画の大事なところなのかなと思いました。その感じをキャラクターとして拾い上げていることは、私みたいな子にはきっと救いになる。自分がその役を演じられたことはとても光栄だなと思いました。 ――以前も「私の中にチャチャがいると受け入れることが、自分自身を認めることにもつながった」というふうに話していましたが、そういう経緯があったんですね。 言語化してみた時に、改めてそういうことなのかもしれないと思いました。ずっと自分のことをネガティブな角度から見ていて、認めてあげられなかった部分があるというか。自分では恥じている部分が、相手の目にはまぶしく映る場合もあるという可能性にフォーカスできていませんでした。世間の目を意識しすぎて、自分で自分を縛っていたんだと思います。 ――酒井麻衣監督は、映画化もされた人気ドラマ『美しい彼』シリーズなどで知られる方です。持ち味といえば、キラキラとしてガーリーだけど、ちょっと毒っぽい世界観。チャチャにもいい意味で毒があると思うのですが、伊藤さん自身はそういうムードってどう思います? 惹かれるのは、その両方を持っている人です。純粋な明るさと、危険な毒って紙一重だなって思っていて。例えば、子どもの好奇心が残酷になりうるみたいな。ちょっとしたことで、見え方がガラッと変わるような人やものに魅了されます。ファッションにせよ、好きなアートにせよ。だからチャチャの世界観に関しては、すんなり理解できたように思います。 ――以前のインタビューで「クリエイターと話すことは、役者の仕事ともつながっているような気がする」と話していました。連載「誰かのホーム・スイート・ホーム」も含め、どういう点で両者のつながりを感じますか? 乃木坂46所属時から、クリエイターの方たちとお話しする機会を通して、作るプロセスを楽しむことを教えていただき、それが私の生きがいになりました。役者業を始めてからも、合間にスタッフの方たちと言葉を交わすだけで、作品への理解度が深まるし、仲間意識も生まれる。変な話、興行収入だけでは測れないものが、現場にはあると思うんです。作品完成後のプロモーション時期には、そういう現実を見るのも大事だけど、撮影中はある意味関係ない気がしていて。純粋に作ることが大好きで集まったスタッフの方たちが、カメラワークや照明などについて話し合っているのを見るたび、“すごい方たちだな”と胸がいっぱいになります。そもそも私自身、役者でもあり、作り手でもある。両方の意識をもつことで、一つ一つの作業をより大事に感じられるというか。自分がクリエイションに興味があってよかったなと心から思います。 ●『チャチャ』 デザイナーとして働くチャチャは、小説の挿絵や表紙を担当。上司からは才能を認められているが、そのせいで同僚から陰口をたたかれることも。しかし、彼女自身は“人目を気にせず好きなように生きる”のが信条で、どこ吹く風だ。デザイン事務所が入っているビルの 1 階にレストランがある。そこで働く樂(らく)は、いつも気だるそうで、仕事でもミスを起こしてばかり。ある日、屋上の喫煙所で、彼が落とした鍵をチャチャが拾ったことをきっかけに、二人は距離を縮めていく。樂の自宅で手料理を振る舞ってもらったチャチャは、そのまま家に居つく。一緒に過ごすうち、次第に樂に惹かれていくチャチャ。しかし、彼は思いもよらない秘密を抱えていた……。 監督・脚本_酒井麻衣 出演_伊藤万理華/中川大志、藤間爽子、塩野瑛久、ステファニー・アリアン、落合モトキ、藤井隆 配給_メ~テレ カルチュア・パブリッシャーズ 10月11日(金)より新宿ピカデリー他全国公開 © 2024「チャチャ」製作委員会 ●伊藤万理華 1996年生まれ、大阪府出身。主な出演作に、映画『サマーフィルムにのって』『もっと超越した所へ。』『そばかす』、ドラマ『お耳に合いましたら。』『日常の絶景』『時をかけるな、恋人たち』『%(パーセント)』『燕は戻ってこない』などがある。これまで3度開催してきた展覧会では、自らがキュレーターとなり、漫画家やデザイナーなどさまざまなクリエイターとのコラボレーションが実現。待機作に2024年11月15日(金)公開の映画『オアシス』(岩屋拓郎監督)、25年1月17日(金)公開の映画『港に灯がともる』(安達もじり監督)がある。 [衣裳クレジット]ジャケット¥82,500、スカート¥51,700、ブーツ¥74,800(すべてヨウヘイ オオノ)/チョーカー¥23,100(フミエタナカ|ドール) Photo_Wataru Kitao Styling_Miri Wada Hair & Make-up_Yuka Toyama(mod’s hair) Text & Edit_Milli Kawaguchi
GINZA