メーカーと作る「リテールメディア」イトーヨーカ堂が「小売りの役割」を根底から見直す理由
■ リテールメディアで「メーカーのファンづくり」に注力 ──リテールメディアの取り組みが始まったことで、メーカーの担当者とのコミュニケーションは何か変わりましたか。 望月 フリーペーパーの制作をする中で「この商品の魅力は何ですか」という、商品の良さに関する話題が増えたと感じています。「取引上の利益をどれだけ出すか」というコミュニケーションから、「お客さまにとってのメリットは何か」を深く考えるようなコミュニケーションへ変わってきています。 篠塚 リテールメディアは顧客IDを軸にした自社のメディアですから、一過性ではなく継続してお客さまにアプローチできることが強みです。その継続的なアプローチによって「メーカー様のブランドや商品のファンづくり」に注力したいと思います。 だからこそ、売り上げに加えて「いかにメーカー様のファンを増やせるか」も大事なKPIになると考えています。今後、メーカー様とは共に連携して1つの目的に向かう「パートナー」に近い関係性になるのではないでしょうか。 望月 ファンを増やすためには、これまで以上に私たちがメーカー様に寄り添う姿勢が求められると思います。メーカーの方々には「イトーヨーカドーのデータや店舗といったアセットを最大限に使ってマーケティングをしていきましょう」というお話をさせていただいています。リテールメディアは販促にとどまらない、広範なマーケティングの取り組みだと捉えています。 ──リテールメディアによって目指す未来像はどのようなものなのでしょうか。 篠塚 お客さまに商品の良さを知っていただき、買い物体験がより良くなることを目指していきたいですね。そのためにもメーカー様と社内の双方に仲間を増やして、プロジェクトを成長させたいと考えています。 望月 私はセブンネットショッピングに在籍していた時代にバイヤーの故・藤巻幸夫さんに仕事を教わったことがあります。藤巻さんからは「日本にはこだわりを持ったたくさんのメーカーがある。そんなメーカーの商品を日本中から目利きをして仕入れて、お客さまに間違いのない商品をお届けすることがバイヤーの醍醐味であり、小売りの醍醐味なんだよ」と教わりました。このリテールメディアの取り組みを通じて、メーカー様のファンを増やしたいですね。
三上 佳大