バイオリニスト・廣津留すみれに聞く音大卒のキャリアパス「大学の専門がすべてじゃない」 大事なのは客観力とセルフプロデュース力
小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(31)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA dot.連載。今回は、音大生の卒業後の人生を憂う50代女性からの質問に答えてくれた。 【写真】廣津留さんの別カットはこちら! * * * ■Q. 音大に入学して音楽を学んでも、その後なかなか自分の居場所や就職先などが決まらず音大はハイリスク、ローリターンな選択と言われるようになりました。演奏家や音楽教員・講師以外で、音大卒にはどのようなキャリアパスが考えられるでしょうか。 A. 私は音大に限らず、大学で専門に学んでいたことがすべてではないはずだと思っています。アメリカでは大学で何かを学んだとしても、本当の専門は大学院で突き詰めたり、その後にやりたいことがあるなら、その道を一から進んだりしてもいいという感覚がありました。そう考えると、本当にいくらでも選択肢はあるんです。大学院に進学して別のことを学んでもいいし、就職を考えるときも大学で専攻したことを必ずしも仕事にしなくたっていい。 「音大がハイリスク、ローリターンな選択」という考えは、音大卒は音楽を生業にしないといけないという固定観念があるからではないでしょうか。まずは、そのマインドを取っ払ってみませんか? そのためには、客観的なものの見方ができるよう、異なる分野の人たちと交わることが大事だと思います。例えば、高校時代の友人や異分野のプロの方など音大以外の人たちとのネットワークをキープし、彼らと定期的にコミュニケーションを取れるようにしておくと、世の中のことや他の同世代がどうやって生きているのかなど、音大の外の世界を知ることができます。多くの人に人気の音楽家でも音大卒じゃない人って意外にいますしね。音楽を専門にしている分、音大の中だけに身を置いていると、特に音楽に対して客観視できなくなってしまうことがあります。マスに受ける感覚や一般に近い感覚に直接触れて、客観的に物事を見られる環境にいることはとても大事だと思います。