ラーメン、鍋…熱い料理の食べ過ぎで「食道がん」になるって本当? 真偽を専門医に聞いてみた結果
冬になり、ラーメンや鍋料理などの温かい料理を食べるようになった人は多いのではないでしょうか。寒い日に食べると、よりおいしく感じると思います。 【画像】「えっ…!」これが「食道がん」を防ぐ方法です 一方、ネット上では「熱い食べ物をよく食べる人は食道がんになりやすい」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。食道がんの原因や対処法などについて、筑波胃腸病院(茨城県つくば市)理事長で消化器外科専門医の鈴木隆二さんに聞きました。
65度以上の飲食物を頻繁に摂取するとがんリスク増
Q.そもそも、食道がんになる原因について、教えてください。 鈴木さん「飲酒と喫煙が主な原因です。アルコール摂取量がエタノール換算で1日50グラム以上(ビール中瓶2本程度)を超えた場合、食道がんのリスクが3~5倍に増加します。アルコール摂取量は累積効果もあるため、毎日、お酒を飲んでいる状態が長期間続くと、さらにがんのリスクが高まります。 また、1日20本(1箱)以上のたばこを吸う人は、非喫煙者に比べて食道がんのリスクが2~3倍に増えます。さらに、喫煙と飲酒を併用するとリスクは10倍以上になるとされています」 Q.熱い食べ物を食べ続ける生活を続けると、食道がんになりやすいという話を聞きますが、本当なのでしょうか。 鈴木さん「本当です。65度以上の飲み物や食べ物を頻繁に摂取する人は、そうでない人に比べ、食道がんの発生リスクが約1.5倍に上がるとされています。特に、70度を超える食べ物や飲み物を摂取するのが習慣化している人は、さらに食道がんのリスクが高まります。 そこで、熱いお茶やスープなどを飲む際は、60度程度に冷ましてから飲むのがお勧めです。飲む前に湯気がほとんど立たなくなるまで待つことで、適温を保てます。また、熱い飲み物を好む場合は、スプーンや氷を使って適度に冷ます習慣をつけましょう」 Q.食道がんになった場合、どのような症状が出ることが多いのでしょうか。 鈴木さん「初期症状として、肉やパンなどの硬い食べ物が喉を通りにくい感覚が生じるようになります。これは直径1.5~2センチ程度の腫瘍が食道にできた場合に起きるといわれていますが、多くの人がこの症状を見逃してしまうため、注意が必要です。 初期症状を放置すると、液体や軟らかい食べ物でも飲み込みが困難になるほか、月に3~5キロほど、体重が減少するようになります。 そこで、『固形物が喉を通りにくい』『胸や喉が痛い』『生活習慣に大きな変化はないのに、体重が減る』という状態が2週間以上続く場合は、医療機関を受診してください」 Q.では、熱い飲食物の過剰摂取を控える以外に、食道がんを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。対処法について、教えてください。 鈴木さん「先述の内容と重なる部分もありますが、次の5つの対策に取り組んでみてください」 (1)飲酒と喫煙を制限する ・アルコールの摂取量は1日20グラム以下を目安にしましょう。アルコール20グラムはビール小瓶1本またはワイングラス1杯程度に相当します。 ・完全禁煙を目指しましょう。禁煙すると5年以内に食道がんのリスクを半減させます。 (2)食生活を改善する ・1日350グラム以上の野菜、果物を摂取しましょう。例えば、1日にブロッコリー50グラム、ニンジン80グラム、リンゴ200グラム(1個)などを摂取してみてはいかがでしょうか。 ・塩分の摂取量は1日6グラム以下を目標にしましょう。 (3)熱い飲食物を避ける ・飲み物は60度未満に冷ましてから飲みましょう。 ・食事の際、スープや煮物などは少し冷まし、直接、舌や喉がやけどする温度(65度以上)で摂取しないようにしてください。 (4)胃酸の逆流をできるだけ防ぐ ・胃酸の逆流は、通常の食道がん(扁平上皮がん)ではなく腺がんの発生と関連しています。胃食道逆流症(GERD)により、胃酸や胆汁酸が食道粘膜に長期的に接触することで、細胞の異常増殖のほか、食道の粘膜(扁平上皮)が円柱上皮(胃の粘膜)に置き換わる、いわゆる「バレット食道」の形成が促進され、これが腺がんのリスクを高めるとされています。つまり、胃酸の逆流は食道腺がんのリスク要因と言えます。 ・就寝直前に食事をすると、胃酸が逆流する原因となります。就寝の2時間前までに食事を終えましょう。 ・就寝時は枕を少し高くするなど、胃酸の逆流を防ぐ工夫をしましょう。 (5)定期的に検査を受ける ・飲酒や喫煙の習慣がある人、胃食道逆流症の既往がある人は、1年に1回の内視鏡検査を受けましょう。 以上のように、具体的な数値目標を取り入れることで、必要な取り組みがよりイメージしやすくなるかと思います。これを基に、日々の生活習慣を少しずつ改善してみてください。
オトナンサー編集部