〈写真に注目〉海外でこんなに大きな魚が釣れる理由 釣り人たちにも影響を及ぼす日本漁業の悪循環
ところで日本ではいまだに「大漁祈願」です。一方で大きな魚がたくさん釣れる北米・北欧・オセアニアなどでは、資源量を厳格に管理しています。漁獲量ではなく、漁獲枠内での水揚げ金額をいかにして最大にするかが重視されているので、「大漁祈願」といった感覚はありません。 科学的根拠に基づく管理と自主管理という資源管理方法の違いにより、海の中に大きな魚がたくさんいる国と、そうでない日本とに分かれてしまったのです。そして水産業が成長と衰退という形で全く対照的になってしまいました。 水産業だけでなく、魚が減って釣れなければ釣りに関わる産業も低迷してしまいます。一方で資源が持続的になれば、成長産業として発展を続けます。
漁業と釣りとの不要な確執
日本では、巻き網や底引きといった魚をたくさん獲ることが出来る漁業と、沿岸漁業、そして遊漁船との確執が絶えません。 零細な沿岸漁業者の中には、巻き網漁船や底引き船が一網打尽にしたから魚が減ったと考えている方が少なくないと思います。また遊漁船を良く思っていないケースもよくあります。 一方で科学的根拠に基づいて漁獲枠を設定し、それを沿岸漁業優先で漁業ごとに配分している代表例であるノルウェーではどうでしょうか? 同国の漁業関係の代表者に話を聞いたことがありますが、日本のような確執は起きていないとのことでした。また同国では小型漁船から大型漁船に至るまでの仕事の満足度は実に99%です(SINTEF2016年のデータ)。 大前提として水産資源管理が機能しているために、大きな魚が海の中にたくさん泳いでいる現実があります。さらに沿岸漁業者のように、大型の漁船に比べて漁獲量が少ない漁業に優先して漁獲枠が配分されているから、漁業者間の不満が生じないのです。
遊漁船が釣る漁獲量データは?
漁業管理を機能させて資源を回復させていくために欠かせないものがあります。それは漁獲データです。日本の場合、このデータ管理がしっかりしていません。遊漁船になると、そもそもデータを取っていないので、年間どの魚種がどのくらい釣られているかもわかりません。 体長や持ち帰り尾数を制限している場合があると言っても、遊漁船で釣りをしたことがある方はご存知と思いますが、ほぼ機能していません。遊漁船でこの規制を理解して実行している釣り人は、ほとんどいないでしょう。 ところで例外として福島県のヒラメ釣りを挙げてみます。福島県では大きなヒラメが釣れる海域があります。県の体長制限は30センチですが、自主的に50センチに制限しているところがあります。 上のグラフをご覧ください。30センチのヒラメはまだ1歳です。地域差はあるかも知れませんが福島県では3歳以上、つまり50センチ以上に制限しております。 30センチの子どものヒラメを獲り続ければ、資源を持続するために産卵できる親は増えていきません。ちなみにヒラメの寿命は10年以上ありますが、日本ではそこまで成長する前にほとんど漁獲されてしまいます。 一方で体長制限を50センチにすることで、これが守られていれば、成長乱獲が起きにくくなります。なお30センチのヒラメではカレイのようなサイズで、とてもヒラメのサイズと言える大きさではありません。 釣り人としては50センチもあるヒラメなら2~3尾でも持ち帰れば食べきれないくらいの量になります。ところが小さなヒラメの場合は、可食部が少なく家で食べるのにはもっと尾数が必要です。 サイズ制限によってある程度の資源管理はできます。キャッチ&リリースも効果的です。小さな魚だけでなく、大きな魚も含めてリリースされていけば、資源の減少をある程度まではくい止めることができます。しかしながら、やはり数量管理が不可欠です。