『君に届け』椎名軽穂インタビュー!18年ぶりの新連載はオカルト×ラブコメディ『突風とビート』
マンガライターの横井周子さんが、作品の作り手である漫画家さんから「物語のはじまり」についてじっくり伺う連載「横井周子が訊く! マンガが生まれる場所」。今回は『突風とビート』作者の椎名軽穂さんにお話を聞かせていただきました。 【マンガが生まれる場所】漫画家さんに訊いた「物語のはじまり」(画像)
オカルト×コメディは昔から描きたかったテーマのひとつ
──18年ぶり(!)の完全新作『突風とビート』の連載開始、おめでとうございます。8月に1巻が発売されたばかりですが、今のお気持ちはいかがですか? もう、単純にうれしいですね。新しいマンガはやっぱり色んなことが新鮮で楽しいです。これまで描いてきたマンガとはキャラクターの性格やタイプが違うし、それが見た目にも自然と反映されているので、服を描く作業もわくわくするんですよ。 ──『君に届け』や『君に届け 番外編~運命の人~』で直球のラブストーリーを描かれてきた椎名さんですが、今回の『突風とビート』はオカルト×ラブコメディ。メインキャラクターの「二家光(にけひかり/ニケ)」と「根元久楽(ねもとくらく/ネモ)」は霊が視えるうえに話すこともできる体質です。 オカルトにはずっと興味があったので、昔からいつかこういったテーマのコメディを描きたいと思っていました。 ──そういえば、『君に届け』の主人公・爽子もホラーの『リング』シリーズにちなんだ貞子というあだ名でしたね。 そうなんです。爽子は見た目だけでしたが、『突風とビート』の主人公・ニケは自覚していないけれど霊感があります。私は手相占いとかも好きなんですが、詳しくないのでどう見たらいいのか全然わからないんです。なのに、自分の手をじっと見ていると「霊感が強い線がある気がする!」なんて思ったりして(笑)。まったく霊感はないんですけどね。そういう日常的な感覚が最初のアイデアになりました。 ──オカルト的な世界に興味を持つきっかけは何かありましたか? やっぱりマンガですね。じんわり「おっかない…」ってなる話も好きだし、ホラー系も好きだし。ただ、物語を作るうえでは、私には「恐怖」を描く素養がないなとも感じていました。世界の不思議さや、そこからくる怖さに読者としてときめいてきたけれど、自分の内側からは湧き出てこない。じゃあ、ラブコメディと組み合わせようか、と。 ずっとラブストーリーを描いてきたし、恋する女の子たちはやっぱりすごくかわいいのでこれからも描きたいと思っていますが、私自身が年齢を重ねたこともあり、今の自分が好きなマンガは主軸があったうえで恋愛も進んでいくお話が多いんですね。だから『突風とビート』ではそこに挑戦したいと思っています。 ──愛読されてきた怖いマンガを教えてください。 たくさんありますが、『汐の声』『わたしの人形は良い人形』など、山岸凉子先生のマンガが大好きです。言葉にするのが難しいのですが、説明的じゃない部分に魅力を感じます。鏡に霊がうつったり、何もない床に突然頭があったり、見た瞬間「わあ!」と驚く描写がある。それってマンガの面白さのひとつでもあって、気づかなければ通り過ぎてしまうけれど、見つけた瞬間に湧き上がる感情がありますよね。