タイが飽和状態になりインドネシア獲りに押し寄せる中国メーカー! それでもBEV化を急がない「日本車の優位」が揺るがない理由とは
インドネシアに続々進出する中国系ブランド
今回開催されたGIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)2024では、新たにGAC(広州汽車)アイオン、JETOUR(奇瑞汽車系SUVブランド)、そしてBAIC(北京汽車)が、中国系ブランドとしてGIIAS会場内に展示ブースを構えた。GIIAS2023では7つの中国系ブランドがブースを構えていたが、GIIAS2024では9つの中国系ブランドが会場内にブースを構えることとなった。 【写真】日本じゃ見たことない!? ガイキンド・インドネシア国際オートショー2024に展示された電気自動車(全8枚) 2024年春にタイの首都バンコク近郊で開催された、「バンコクモーターショー2024」では、主要ブランドだけで8つの中国系ブランドがブースを構えたが、すでに来年、つまり「バンコクモーターショー2025」では、さらに新規で4つの中国系ブランドが出展申請しているとの情報も入っている。 世界的にBEV販売が停滞するなか、タイでもBEV販売に陰りが見えるようになり、とくに中国系ブランド同士では値引きを拡大するなど、「潰しあい」ともいえる乱売が起こっている。インドネシアでもショー会場を見ている限りでは、中国系ブランドが増え続けているので、早晩タイと同じような乱売合戦が起きるのだろうか。 「インドネシアではタイほどBEVの販売は増えていません。ジャカルタ首都圏など、BEVが売れているのはまだまだ地域も限定的で、しばらくはタイのようなことは起きないものと考えています」とは現地事情通。ただ、2024年に入ってからBYDが正式参入してきたのは気になる動きと見ているようだ。 「BYDの動きはほかの中国系と比べると、その本気度に違いを感じますね。会場を見渡しても結構多くの中国系ブランドがブースを構えていますが、最終的にインドネシアで残るのはBYDとウーリン(上海通用五菱汽車)やMGといった上海汽車系ブランドに限られるのではと考えております」と話を続けてくれた。
BEVだけではインドネシアで生き残ることができない?
さらに、インドネシアならではともいえる動きとしては、「中国系ブランドの多くがBEV一辺倒というわけでもなく、ICE(内燃機関)車もラインアップしています。そのようなブランドはまだいいのですが、BYD以外でBEVのみとなっているNETAあたりは、今後状況が厳しくなっていくのではないでしょうかね」とも分析してくれた。 タイでは「中国系ブランド同士の潰しあい」がはじまったと前述したが、蚊帳の外にいる日本メーカーを中心とするICE車にも乱売の余波がふりかかるのではとの心配も出ているので聞いてみると、「インドネシアはもちろん、タイでもそのようなことにはならないのではないですかね。東南アジアにおいて再販価値がバッチリ高く、品質も高く評価されているのが日本車で、消費者もそのあたりは理解して乗っていますので、再販価値を下げるような乱売は好まれない。そこは心配しすぎといえるかもしれませんね」と語ってくれた。 確かに筆者はジャカルタ市中心部で道を走るクルマを定点観測しているのだが、よく見かける中国系ブランドはウーリンが圧倒的に多く(しかもICE車)、最近ではBYD(圧倒的にATTO3)もよく目にするようになった。あと、背景はよくわからないのだが、チェリー(奇瑞汽車)系のOMODA(オモダ)ブランド車も今回はよく見かけた。 政府はBEV普及に前のめりなようにも見えるが、そもそも四輪車のマーケットがまだまだ発展途上にもあるインドネシアでは、二輪車がかなり多い。二輪車からBEV(四輪車)へ一足飛びに需要を移すのはいろいろな面で、かなり厳しいようにも見える。 ただ、中国国内の景気低迷、そしてタイでの乱売傾向を受け、インドネシアでもとりあえず自動車ショーへ新規出展する中国系ブランドは今後も目立っていきそうである。
小林敦志