東京・江戸川橋地蔵通り商店街の野村幸枝さんが焼くチョココロネに絶えぬファンの聖地巡礼
お年寄りでにぎわう東京都・巣鴨の「地蔵通り商店街」と同名の商店街が、文京区関口にもある。「江戸川橋地蔵通り商店街」だ。明治初期から地元に親しまれてきたが、平成の終わりに始まったあるものがきっかけで注目を集める。「地蔵通り商店街振興組合」の理事長を務める野村幸枝さん(71)が営むパン屋「サンエトワール」も、東南アジアなどからも観光客が訪れる人気店となっている。 【写真】手作りパンを自ら販売する野村幸枝さん ■接客の方が楽しい 東京メトロ有楽町線江戸川橋駅から5分ほど歩くと、明治初期に神田川の氾濫で流れ着いたとされる「子育地蔵尊」にたどり着く。商店街はそこから十字を描くように広がっている。野村さんは先代の両親のもと、この地で育った。 「商売のことを学んでみたかった」と商業系の大学を卒業後、大手証券会社の本店営業を経験。社会人4年目に、「やっぱり店頭で人と接する商売をやるほうが楽しい…」と会社を辞めて家業を継ぎ、以来40年以上、自らパンを焼き、店頭で売る日々が続く。 実は、このサンエトワールは世界から注目されている。きっかけは平成29年、アニメ「BanG Dream!(バンドリ!)」の放送だ。劇中にキャラクターの実家のパン屋として登場する店のモデルではないかと、ファンの訪問が引きも切らなくなった。外国人観光客も含めた多くのアニメファンによる「聖地巡礼」は絶えず、劇中歌に登場するチョココロネを指名買いしていく。 ■ライブに合わせて 当初は失敗もあった。「お客さんが来るって分からず普段通りの数しか作っていなくて、全然足りないこともありました」。今では、日本武道館(千代田区)で同作品に関連するライブが開催される日に、多くの人が来ることが分かり、定期的にライブの日程を確認して多めにパンを焼き、わざわざ来店したファンらの手に届くようにしている。 大型店舗の進出やネット通販の台頭、経営者の高齢化と後継者問題など、全国的に商店街を取り巻く環境は厳しい。令和2年から振興組合の理事長を務める野村さんもこれらの課題に立ち向かっている。 悩ましいのが街路灯の老朽化だ。取り換えには高額な費用がかかるといい、「何から手を付けていいのか、全く分からない」とこぼす。商店街の振興活動に参加する人が年々減っていることも悩みの種。各店舗は自店を切り盛りするので精いっぱいで、近年はチェーン店の参入も多い。