調理定年を迎えた親の食事、どうサポートする? 料理研究家と医師が語り合う「高齢者の食事」。
パンやおにぎり、お菓子に偏り 肉・魚、野菜が不足しがち。
石川 高齢の方で栄養が偏っている人はすごく多いです。今はコンビニでも1人分のお惣菜が並んでいますが、どうしてもパンやおにぎり、お菓子といった簡単に食べられるものに手が伸びるので、肉・魚や野菜が不足しがち。そこに具だくさんの味噌汁を加えるだけでもぐっとバランスがよくなると思います。バランスよく食べることは免疫力に関わることでもあり、やはり大切ですから。 林 毎回何品もおかずを用意しなくても、丼ものでもいいですしね。 石川 自分の母親を見ていても、何種類か作りおきしておいたおかずのうち、自分の好きなものは一気に食べてしまうんですよ。反対に、全く手をつけていないおかずもあって、気の赴くままに食べている感じです。食欲があるだけでもいいかなと思っているんですけどね。食べやすさや嗜好などが、頭で考える栄養バランスに勝ってしまうんでしょう。 林 私も少量ずつ小分けにして送っていましたが、「おいしかったからいっぺんに食べたわ」と言われるものもあれば、「多すぎた」と言われるおかずもありました。 石川 常に少量しか食べない人も多い印象です。お弁当などの宅食サービスを利用している人も、1回分の食事を2回に分けて食べているという人が圧倒的に多いですね。 林 おかずが一度にいろいろ並んでいるのを見ると、目でお腹がいっぱいになってしまうのかもしれませんね。義理の母が晩年に介護施設に入っていたのですが、そこでの食事の様子を見ていてもそうでした。 石川 食べる量が少ないと、それだけで脱水症になるので要注意です。食べ物には常に水分が含まれているので、食事量の低下している高齢者は脱水症になりやすいんです。 林 それは気をつけないと。もう一つ、義母があまり食べなかった原因を考えてみると、介護施設の食事は基本的に全部が薄味なんですよね。それだと刺激がないのではと思ったんです。義母自身は医師から特に減塩を指示されていなかったので、時々しっかり味つけをしたおかずや甘いものを差し入れすると、すごく喜んでいました。外食にも連れて行ったんですが、焼肉店に行った時なんて「おいしい!」と喜んで食べていましたよ。