調理定年を迎えた親の食事、どうサポートする? 料理研究家と医師が語り合う「高齢者の食事」。
石川 医師から特に指示がないのなら、食欲がない時はおかずの味は濃くてよいと思います。おかずを食べる量が少ないと、摂取するミネラルが減り、低ナトリウム血症などで活気がなくなる原因になるからです。味が濃いほうがご飯も進みますし。 林 極端な話、たとえほかのおかずが塩分ゼロでも、一つだけはっきりした味つけのものがあるほうが親にとって刺激になるのかも、と思いました。栄養学的にはよくない考えでしょうけど。 石川 私も本当に食欲が落ちている患者さんには、何を食べてもいいとお話ししています。プリンやアイスクリーム、カステラなどは栄養価も高いので、ごく少量しか食べられない方、病後の方にはお勧めしていますね。
最初から正解を目指さず、 長いスパンで捉えるのがコツ。
石川 同居していないと親がどんな食生活を送っているのかはなかなか把握しづらいですが、時々親の家を訪れるくらいでも、家の様子で分かることはいろいろとあると思うんです。 林 お菓子やパンがテーブルの上に置いてあるとか、冷蔵庫の中に賞味期限切れのものがたまっているとかね。 石川 そうですね。もし外部のサポートが必要だと思ったら、介護保険サービスにもいろいろな選択肢があり、場合によっては食事の支援も受けられます。ケアマネージャーなどと相談しながらよい方策を見つけてほしいです。 林 私は親に作りおきを送りながら、自分自身がすごく勉強させてもらいました。「年をとるとこういうことが難しくなるんだ」とか「こんな食事がいいんだ」とか。おかげで自分の老後を冷静にとらえられるようにもなりました。もしも親に作りおきを送ってみようと思う人がいるなら、最初から正解を目指さず、親とコミュニケーションをとりながら少しずつ調整していってほしい。そしてくれぐれも無理をせず、気楽にやってみてと言いたいです。 石川 林さんのお話を伺っていて、自分自身を追い詰めずに親をサポートしているところが自分と共通しているのかもと思いました。それが大切なことなのかもしれません。あまり細かいことを気にしすぎず、長い目で見ながら自分にできる範囲でサポートを続けていけたらと思います。